エリアによって多少のズレはあるけれど、2〜5月はチヌ釣りの好シーズンです。この時期はエサ盗りが少なく、大型が盛んに活動するためです。
自己ベストを更新する最大のチャンスでもあり、チヌ釣りファンの目標である50㎝オーバーはおろかロクマルに遭遇できる可能性も高いです。
ところが、周囲の釣り人は次々に大型を釣り上げているというのに、アタリさえないというビギナーも多く見受けます。
そこで、チヌに食わせるための5つのチェックポイントを前編と後編に分けてご紹介します。
ウキ下が合っていない
チヌはお腹が白い。これは、カレイやヒラメのお腹が白いのと同じでいつもは海底近くを泳いでいることを表しています。だから、ツケエが底近くを流れるようにウキ下を調整するのです。
それなのに、ビギナーの皆さんはしばしばとんでもないところを流しています。その例を下の図で解説しましょう。

AからEまで5つのパターンを挙げていますが、ここではDを正解としておきます。厳密な意味ではDだけが正解ではないのですが、ビギナーはとりあえずDを目指してください。
ところが、そのことは知っているのに、そうしない釣り人がいます。つまり、A、B、C、Eの状態で仕掛けを流しているのです。これでは釣れません(とは言い切れないのが釣りの難しいところですが)。
なぜそうするのか? それは主に次のような理由によります。
海底はフラットではない

砂地の狭い範囲に限れば、平坦ですが往々にして海底には凹凸があります。特に、磯は起伏が大きく、どこにタナを合わせればよいかが分かりづらいです。
これには根掛かりという大きな問題がついて回ります。
Dの状態にセットすれば右、または左に流れたとき根掛かりしてしまいます。何度もそれが続くとC、またはBの状態にしてしまうのも無理からぬ話です。
しかし、それではチヌがアタる確率は格段に下がってしまいます。チヌ釣りに根掛かりは付きもので、それを恐れていてはチヌは釣れないという格言もあります。
とはいえ、根掛かりが続くと心が折れてしまいます。仕掛けを流すのが嫌になると本末転倒なので、ここでは根掛かりを避けて、なおかつチヌがアタる確率が高い方法を三つ紹介しておきましょう。
①カケアガリを攻める

沿岸部では潮が横に流れることが多いです。足元から続くカケアガリに沿って流すと水深は一定の場合が多く、根掛かりせずに底スレスレを流すことができます。
②一定の範囲を反復して流す

沈み瀬の際などチヌがアタる確率が高いところを集中して釣ります。潮の方向と沈み瀬の位置を読んで、より広い範囲を流せるところを選びます。
③沈み瀬の先を釣る

ある程度の速さで流れていれば、仕掛けを止めることでツケエは浮き上がります。その状態で沈み瀬を越え、通り過ぎたところで送り込みます。沈み瀬の先はマキエが溜まりやすく、チヌが集まっている可能性が高いです。
水深を測っていない
意外にもこれはベテランに多いミスです。地形を見て、「これくらいだろう」と判断してあいまいにウキ下を設定してしまう。
仕掛けを何度も流しているうちに修正すればいいやと気楽に考えているのですが、竿3本もある深場だと簡単には修正できません。それ以前に、仕掛けそのものを変更しなければならない場合もあります。
初めての釣り場では、大ざっぱでもいいから水深はきちんと測っておきましょう。
仕掛けが沈んでいない
ウキ止めは竿1本半の位置にあるのに、実際にはそこまで仕掛けが沈んでいないことが往々にしてあります。
これは軽い仕掛けを好む人に多いケースで、G3とかG5のガン玉、さらにはガン玉なしだったりすると、無風ベタナギ、潮も非常に遅い場合でないと竿1本以上沈めるのは難しいと思ってよいです。
「ツケエを魚の目の前まで沈める」それがチヌ釣りでは一番大切なことだと肝に命じてください。
ツケエが合っていない

オキアミは海の釣りでは万能といっておきます。これで釣れないものはないといえるほどです。それだけ効力のあるエサですが、オキアミ一つあれば十分というわけではありません。
特に、チヌに関しては、一種類のエサだけで対応しない方がよいです。
というのは、ツケエを替えた途端に食ってきたというケースが非常に多いからです。チヌ釣りでは最低3種類のツケエが必要で、ベテランの間ではこれが常識といってよいでしょう。

一般的にはオキアミをメインにして、ムキミや練りエサを準備する人が多いです。この(ダンゴ)二つは余った場合、持ち帰って冷凍保存することが可能だからです。
もちろん、好みや実績によってはムシエサやカニ(春は硬いエサを使う人は少ないですが)を使っても構いません。要は、エサを替えることによってチヌに興味を抱かせるのが狙いなのです。




持参していたエサではなにを使っても食わない場合は、現地で調達することも考えましょう。海岸(特に磯の場合)にはチヌのエサがふんだんに転がっています。人気が高く使いやすいのはジンガサですが、他にもカラスガイやカキ、ヤドカリ、巻貝と種類は多いです。
ただし、いずれも干潮前後の方が採取しやすいのと、ジンガサやカメノテのように道具がないと採りづらいものがあります。ナイフを使うと刃がボロボロになりやすいからおすすめできません。できれば採取用の道具を常備しておきたいです。
ツケエを替えた場合に注意したいのが、比重の違いによるウキの喫水線の変化です。軽いオキアミでギリギリ浮いている状態にしておくと、重たい練りエサにすると沈んでしまいます。

したがって、ガン玉による残浮力の細かい調整が要求されます。当然、ウキの浮力はある程度大きいものにしておかないと対応できません。0号のウキでは練りエサを使った半遊動仕掛けは難しいです。
これまでオキアミしか使ったことがないという人は、今季はぜひ違う種類のエサを試してみてほしいです。
マキエと合っていない
フカセに限れば、チヌの釣り方は大きく分けて2通りあります。底で食わせるのが1つ。もう1つは浮かせて釣るという方法です。
本来、チヌは前述したように底近くで生活しています。したがって底で食わせるという方法がチヌの習性にはマッチしています。
しかし地形やマキエ、チヌの活性によっては浅ダナに浮くこともまれではありません。
実際、海底に近い深ダナではアタリがなかったのにウキ下2ヒロで食ってきたというケースはそれほど珍しくありません。もっとも、ここでは浮かせて釣ることについては触れません。
煩雑になるのと、同調させるという点ではグレ釣りと変わらないからです。また、底で食わせるという方法はウキ下を設定しやすく、その意味でもビギナーに向いているといえるでしょう。
ところが、マキエはどこに効いているのか、つまりどこに溜まっているかは、状況によっては非常に分かりづらいです。水深が浅く、流れがゆったりしていればマキエが沈むところは見当をつけやすいです。
しかし、深く潮が速いと分かりづらくなります。地形が複雑で反転流や二枚潮が発生すると一層難解になります。
ここで下の図をみてください。

釣り人自身はAに沈んでいると見当をつけて、その周囲を丹念に探っています。ところが、実際にマキエが溜まっているのはB、あるいはCである可能性もあるのです。
流れが速いともっと潮下に溜まっている場合もあります。これでは釣れる確率が大幅に下がってしまいます。
では、どうすればマキエが沈んでいるところを的確に読めるようになるでしょう?
読みやすいところにポイントを設定する

なんだ、これはと思うかもしれませんが、チヌ釣りの場合は意外に重要な地位を占めています。
例えば、波止の外側〜先端と付け根の地磯があるとしましょう。波止は足元から深く、潮の動きがよい。対して、地磯は足元が浅く、ゆったりした潮が回り込んできています。
一般的には、誰もが波止の外側〜先端を目指します。しかし、それはグレやアジ、メバル、イカ、スズキなどにとっての好条件であり、チヌの場合は最適とはいえません。
もちろん、チヌが生息するのに適していないというわけではありません。チヌを釣るのに向いていないという話です。
水温が急激に下がって活性が著しく落ちたときを除けば、チヌは浅場でも十分食うと思ってよいのです。
したがって、浅場にポイントを設定しマキエを効かせて、そこに誘い込めばマキエが溜まるところは読みやすくなります。
重たいマキエを使用する

マキエが軽いと流されやすく、沈むところが読みづらくなります。しかし、重たいマキエは比較的早く沈みます。そのため、多少水深があっても流れが速くても沈んだところの見当をつけやすいです。
この考え方はチヌ釣りファンの間ではすでに定着しており、チヌ用の集魚剤は大半が比重の大きい成分を多用しています。
ところが、チヌ用の集魚剤すべてが重たいものとは限りません。集魚力と粘りに重点をおいたベーシックタイプや、軽いタイプもあります。
前述したように、浮かせて釣るケースもあるから「チヌ釣りに軽い集魚剤を使う場合がない」というわけではありません。底で釣るときは重たいマキエを使う――それが原則だと思ってよいでしょう。
それに関連して、マキエ量の問題があります。少ない量で的確な位置に沈めるのは至難の技といってよいでしょう。特に、水深が深く潮が速い場合は。

一般的に、チヌ釣りに使うマキエの量は、オキアミ(3㎏)2角に集魚剤1袋という釣り人が多いです。
通常の条件ならそれで正確な予測ができるのかもしれませんが、深くて潮が速いとしばしば読みは誤りやすくなります。また、活性が低いときは、少ないマキエではなかなか効果が出ないことがあります。