堤防周りのファミリーフィシングの主役であるアジなどの小魚は、魚食魚たちの貴重なエサでもある。その小魚を狙って魚食魚が接岸してくるのは夏から秋にかけてだ。
とくに今回のターゲット・ヒラメは、高級魚とされながらも、ここ最近各地の稚魚放流の対象となっているおかげで着実に数が増えており、船釣りはもちろん、サーフでのルアーや堤防周りでの泳がせ釣りの対象魚として、一躍脚光を浴びている魚種なのだ。
堤防のサビキ釣りを楽しみならがヒラメも狙えるという、一石二鳥の釣りをご紹介しよう。
アジ狙いのサビキ釣りのおさらい
竿の長さの範囲にアジが回遊してくるのならウキなしの胴突き釣りスタイルでOK。回遊場所が岸から遠いときはウキを使った遠投が効くウキサビキ仕掛けを使う。
ヒラメ狙いとセットで考えると、より広い範囲を狙えるウキサビキ仕掛けを使用したほうが有利な場合が多いが、足下にヒラメが寄ってくるような場所、たとえばドン深になっていたり、魚影が濃く実績があるような場所の攻略には、仕掛けがシンプルなウキなしの方が手返しがよく有利な場合もある。
足元狙いの胴付き仕掛け

カゴにマキエを6〜7分目まで詰める。詰めすぎるとカゴからマキエが出ないのでフワッと入れること。
仕掛けを静かに海に入れ、狙うタナまで落とし込んだあと竿を軽く上下させカゴの中のマキエを海中に放出する。
マキエが広がる様子を見ながら仕掛けがマキエの煙幕から外れないようにしてアタリを待つ。
魚が寄ってきたら仕掛けを軽く上下させ誘うのも有効。仕掛けや魚の動きを見ながらできる場合が多いので偏光グラスなどがあると有利。
口元が柔らかいアジは、ハリに掛かっても外れやすいので、取り込みは穏やかに。竿先を海面に向けて下げ、仕掛けの付け根近くまでリールで巻き取ってから竿で持ち上げそのまま陸まであげること。海面でぐずぐずしていてはアジが暴れて海に落ちてしまう。
アジの寄りが悪いときはバラシを避けるために1尾ごとに取り込み、食いがいいときは2、3尾掛かるまで待って上げると効率がいい。
全部掛かるまで待つのも面白いが、時間がかかるうえ、ハリ外しが面倒、仕掛けが絡みやすいなどのデメリットも多くなるので適当なところで仕掛けを上げた方が良い。
投げて広範囲を狙うウキサビキ

アジが近くまで寄ってこないときに有効なスタイル。前述の胴突きサビキ仕掛けにウキを付けると完成。水深が深い沖に向かうほどタナの調整がシビアになるので、魚が掛かった位置を見ながらウキ止めをズラしてタナを調整するのが釣果を伸ばすコツ。
釣り方のイメージは同じだが、仕掛けを投げるときは周りを見て安全とトラブル防止に気を配ること。後ろに倒した竿に仕掛けの重みをのせてから大きなストロークでやさしく仕掛けを投げるとうまくいく。
着水したら仕掛けが馴染むのを待ち、竿を大きく2、3回シャクってマキエを放出させウキを見ながらアタリを待つ。足下の釣りと同様に多点掛けを狙うのが基本。
アジは海底近くにいることが多いので、底付近から狙い始め、アタリがなければ少しずつ浅くしていく。狙っている途中でアタリが増えて魚が浮いてきたら(サビキの上の方に掛かり始めたら)タナを浅くするのも忘れてはいけない。
一日中同じタナで釣れることもあるが、時間帯によってアジが釣れるタナは上下しやすいので、絶えず釣れるように調整することだ。
そのままヒラメを狙ってみよう

ここまでのサビキ釣りはアジがメインターゲットだったが、ここからはその仕掛けでヒラメを釣る方法を解説。
といっても理屈は簡単で、サビキに掛かったアジをそのままにしておいてヒラメが食いつくのを待つというもの。ヒラメへのアピールは仕掛けを底近くまで落とし込むだけでOKだ。
陸っぱりからヒラメが釣りやすい場所の条件はいくつかある。サーフ、河口域のミオ筋、漁港の船道のカケアガリなど潮通しがよく地形の変化があるところを狙うのがヒラメ釣りのセオリーとされている。その理由の多くは、エサとなる小魚がいる場所、通る場所だから。
そこで見逃せないのがサビキ釣りが盛んなポイントだ。水深が5m以上ありアジの回遊が多く、なおかつサビキ釣りの釣り人が絶えず居るような場所ならさらにいい。
ヒラメは特徴的な体の形を活かしてエサが豊富なところで待ち伏せをするのが習性で、エサとなる小魚が集まる場所に集まっている確率は高い。
実際サビキ釣りをしていて掛かった小アジめがけてヒラメが飛びかかってくることは珍しいことではなく、この習性を利用したヒラメ釣り用の仕掛けも売られているほどだ。
そしてその釣法こそが、「サビキの落とし込み釣り」だ。
仕掛けは市販の専用仕掛け

一般的に使用するアジ・サバ・イワシなどを対象としたサビキ仕掛けは、必要最低限の釣り糸の太さとなっている。これをそのままヒラメ狙いに使うと、ハリスや幹糸が細くて切れてしまう可能性が高い。なので、ヒラメも狙える太糸仕様の仕掛けを選ぶ。
もちろん釣り糸が太くなっているだけではなく、ハリも工夫されており、アジも掛かるしヒラメや青物など大きな魚も掛かりやすく外れにくい設計になっている。
なにより、アジを掛けたらそのまま狙えるという面倒の無さが一番の利点なので、時合を逃すことなく、エサのアジを弱らせることなくヒラメ狙いに集中できる。
ヒラメ用サビキと記述がなくてもハリスや幹糸が4号以上あれば使える。ハリのサイズが大きいほどよいが、アジが掛かりにくくなるので5〜6号を用意しておくとよいだろう。
釣り方
アジを掛けて落とすだけの簡単な釣りというだけではない。活きエサの付け替えがないのでエサが弱りにくい、複数掛かっていれば誘いの効果が大きいなどのメリットがあっての釣果でもある。
もちろんサビキのマキエに乱舞するアジの群れがヒラメを集めてくれるという効果も期待できる。
入れたらすぐに食いつくこともあるが、基本待ちの釣りになるのでヒットの確率を上げるための努力は惜しむべきではない。
サビキにエサが掛かったらそのままヒラメを釣るのもいいが、できれば一旦仕掛けを回収して、エサをハリにしっかりと付け直すとさらによい。

手順は、ヒラメの捕食層に合わせて下から2〜4番目のハリにエサを掛けること。掛け方は、鼻の穴2つを抜くように通すと、弱りにくく外れにくい。
仕掛けはたるませすぎずラインを張ってオモリが底に着いた状態がベスト。アジが泳ぐ状態がウキの動きや竿先で分かるとアタリが出たときの対処がしやすい。
小魚が暴れだすのがヒラメが寄ってきた合図。竿先やウキの動きに伝わったら、ラインを少し送り込んで食いこむのを待つ。
ヒラメはエサに噛みついて弱らせてから食うので、竿先が完全に持っていかれてからの遅アワセくらいがちょうどいい。
いくら専用仕掛けといえども、サビキのハリはヒラメには小さい。実際、エサが付いたハリが口に掛かるよりは、飲ませてノドに掛けるとか、ほかのハリが体に絡まって取り込めることの方が多いので、最初からその状態に持っていくような操作を心がければキャッチ率を上げることができるはずだ。

取り込み
取り込みは必ずタモを使用する。魚が走った場合は竿の弾力を活かしてラインやフッキングポイントに掛かる負担を軽減する。
魚が強く引いたときに道糸が出るようにドラグは調整しておくのも大切。無理なやり取りをしなければ魚が暴れることも少ない。
急な動作を避けて魚が疲れるのを待ちながらゆっくり浮かせてくる。魚が見えるところまで浮かせたらまずハリの掛かり方を確認する。うまく掛かっているようなら落ち着いて頭からタモ枠の中に魚を誘導する。
場合によってはアジの尻尾側半分に噛みついているだけのこともある。こんなときは一発勝負でタモで一気に掬うか、サビキのほかのハリがヒラメの胴体に掛かるように仕掛けを操作してみること。
水面に体が出なければエサを離すことなくタモに誘導できることも多いので、魚が見えたら掛かり方を確認するというのはヒラメ釣りの重要なファクターなのだ。
ポイント
サビキはハリが多く付いているため、タモ網にハリが引っ掛かってしまうので失敗することも多い。タモ枠は60㎝以上を用意しておき、ハリが引っ掛かっても外しやすいナイロンかラバー製がおすすめ。
泳がせ・ブッ込み釣り

竿とリールに余裕があれば、複数本の竿出しをしてチャンスを広げたい。もちろん、混雑する釣り場ではやらないこと。
竿は磯竿でなくても、シーバス用やエギング用で代用が可能。これらの道具ならラインやリーダーをそのまま流用できるので手間も少ない。
釣り方

ウキを使った泳がせ釣りの場合は、仕掛けに魚をセットしたらタナを合わせて狙いたい辺りに投げ込む。タナは水深より少し浅めに取るのが基本。
沈み瀬や海藻の生え方にもよるが、底がフラットだと仮定して50㎝〜1m底を切るくらいにセットする。
ヒラメは底に着いたエサよりも少し上でゆらゆら泳ぐエサに興味を持つことが知られている。
アタリの出方はサビキと同様まずヒラメが近づいたことを知らせる前アタリから本アタリへ、竿先やウキが小刻みに動いたのちにグーっと押さえこむような大きなアタリがくるのでそれまで待ってからアワセを入れることだ。
ウキを使わないブッ込み釣りの場合は、単純に投げて待つだけとなる。このとき竿は置いてアタリを待つが、道糸はできるだけ張っておくこと。
道糸がたるんでいるとせっかくのアタリがわからないのと、エサのアジが泳いでしまい他人の仕掛けを巻き込むことがあるからだ。
何よりもアタリを見逃して魚に逃げられるのも痛い。また、根掛かりはつきものなので、仕掛けは複数用意しておこう。