今のように情報伝達がスムーズでなかったころ、遊漁船ごとといってよいほど、青物狙いの仕掛けが存在しました。知らない船に乗るたびに、船長に仕掛けについて詳しく聞き、釣行日までに家でせっせと仕掛け作りに勤しんだものです。
最近では「これは釣れるぞ!」という釣り方や仕掛けを簡単にインターネットを利用して配信&検索することができます。このこともあって、地方ごとに存在した仕掛けは統合され、最近は一年を通すと「落とし込み釣り」や「のませ釣り」が人気です。一世を風靡した「ウキ流し釣り」や古くから親しまれている「天秤カゴ釣り」も、ツケエがオキアミやオキアミボイル、魚の切り身のときにはまだまだ活躍しているようです。
今回は現在の主流であり、船のエサ釣りでは人気の高い落とし込み釣りと飲ませ釣りを紹介しましょう。
落とし込み釣り

どんな釣り?
落とし込みサビキともいわれるように、サビキ釣り同様、ハリがたくさんセットされた仕掛けを使用します。特に九州エリアで人気が高く、そのとき食べているであろうエサを使うのですから、釣果も抜群に良くなります。
釣り方としては、ベイトのいる海域へ船を着け、仕掛けを落としてベイトをハリ掛かりさせます。そしてそのまま海底(指示ダナ)まで仕掛けを落としてアタリを待ちます。エサの確保とエサ付けを自動で行うという優れた釣法です。
対象魚はブリ、ヒラマサ、カンパチ、サワラ、マダイ、ヒラメ、根魚と多いのも魅力です。
どんなエサ?
カタクチイワシや小アジがメインのエサとなります。他には小サバやウルメイワシなどで、サビキに掛かる魚が前提です。
効率良くエサを確保するためにも、できるだけ大きな群れがある場所を選びます。さらに対象となる魚がいる場所でないと話しにならないので、その日によってポイントが変わるし、状況により船を次々と移動させて狙う場合もあるから手際良く釣りができるように準備しておきましょう。
サビキが重要

サビキといっても、波止からアジを釣るようなものとちょっと違います。また、適当にサビキを持っていってもエサがなかなか掛からないことがよくあります。まずは船長にどんなものがいいのかを聞いてから準備しましょう。
代表的なサビキは、ハリを平打ち加工してアピール力を強化してエサに食わせるものと、フラッシャーやティンセルが巻かれた装飾フックです。
対象魚によって幹糸やハリスの太さを考慮しなければなりません。特に冬季は10㎏レベルのブリが掛かるから、仕掛けに妥協は許されません。
狙い方
ポイント海域に着いたら、船長が魚探を頼りにエサとなる魚の群れを探し、本命のポイントと調整しながら場所を決めます。船長の合図があったら釣り開始です。そのとき、ベイトがいるタナ指示のアナウンスが船長からあるので、指定された水深に近づいたらメカニカルブレーキを締めて少し速度を緩めて落としていきます。通常は仕掛けを止めずに少しずつ落としながらベイトを掛けます。このタナの指示を正確に守れないとベイトの掛かりが悪くなるので、落とし込み釣りではカウンター付きリールが欠かせないものとなっています。重めのオモリを使うことと、仕掛けの上げ下げを頻繁に行うときもあるため、電動リール必携の釣りともいえます。

ベイトの活性が高いときは指示ダナ付近にサビキ仕掛けを通すと同時に「ブルブル」と掛かった合図が手元に伝わってきます。中層から下層までベイトがいる場合は徐々に落としながらベイトが掛かるのを待ちますが、中層にしかいない場合は再度仕掛けを引き上げてやり直します。
うまくベイトを掛けて一旦オモリを着底させたら、少し巻き上げて海底を切るようにしておきます。こうすることで仕掛けが根掛かりすることを回避するとともに、絶えず仕掛けを張ることができるので、ベイトの有無と本命のアタリがよく分かるようになります。
アタリは、一気に引ったくられることもありますが、ベイトが追われて逃げる動作の前アタリが出ます。間違ってアワせないように我慢して、本命のドスンというアタリを待ちます。
ただし、ヒラメや根魚の場合は重くなるようなアタリもあるので、前アタリがあったのに食い込まないときは、仕掛けをゆっくりと持ち上げてやり、魚が食っていないか、ベイトがちゃんと付いているかを確認します。
掛かったら
落とし込みサビキにはたくさんのハリが付いています。だから、海底だけではなく尾根などにも根掛かりしやすいです。特に魚が掛かって横走りされたら要注意です。根掛かりを回避するためにも、アワセがうまくいったら一気にリールを巻き上げ、海底から10mほど魚を引き離すようにしましょう。この「底切り」作業の良し悪しで、大物が穫れるかが決まります。
仕掛けについて
サビキの種類の重要性は前述の通りですが、根掛かりが多発する場合があるので、仕掛けは10セット以上用意しておきましょう。船によっては船内販売もしているので、事前に確認しておくと良いでしょう。それと忘れがちなのがオモリの予備。サビキが根掛かると同時にオモリも紛失するので、最低でも同数必要です。さらに号数を変える場合はその分も必要になるので注意しましょう。
のませ釣り

どんな釣り
いわゆる泳がせ釣りのことで、枝バリとオモリだけのシンプルな仕掛けでエサに生きた魚(アジやイワシ)を使います。それゆえ、船や釣り人ごとに工夫を凝らした仕掛けが多くあります。
仕掛け角度に注意
流れが強い場所を狙うことが多い落とし込み釣りやのませ釣りでは、1人だけ仕掛けが立っていても斜めになっていてもトラブルになります。
ここで注意したいのが同じオモリを使っていても、道糸の号数により仕掛けの流され方が変わるということ。だから船が混み合っている場合などでは他人の仕掛け角度を気にしながら釣る必要があり、自分だけ角度が違う場合はオモリの号数で微調整します。

エサの確保
生きた魚を船長が用意してくれているわけではなく、ポイントに行く前やポイント付近でサビキで釣って確保します。だからサビキ釣りでなかなかエサが釣れずに時間だけが経過してしまうということもまれにあります。釣った魚は船の活間に入れて生かしておきます。

釣り方
狙うタナは船長が指示するからそれに合わせます。海底のこともあるし、中層だったりもするから、電動リールが必要です。
海底の指示があった場合、オモリを海底に置いたままにしておくと海底を引きずってしまうことになり、すぐに根掛かりするのでオモリは少し浮かせるようにしておきます。
生きた魚を使うので誘いなどの必要はなく、ロッドホルダーに竿を置いてアタリを待つとよいでしょう。ただし船の揺れが激し過ぎると仕掛けが上下して魚を引っ張ってしまうので注意。ハリスを長くするか竿を手持ちにして揺れに備えましょう。
アタリがあってもすぐにアワせないのがこの釣り。「エサを飲ませるまで待つ」ことがしっかりとハリ掛かりさせるコツです。だから前アタリがあって魚が食い込んで竿が大きく曲がるまでドキドキの時間があります。
竿が大きく曲がってから
海面に竿先が突っ込むアタリがあったら、竿を持って大きくアワセを入れます。すでに魚を飲み込んでいるからがむしゃらなアワセは必要ありません。
海底付近を狙っている場合は素早く10mほど巻き上げて根掛かりを回避します。
最近の電動リールはパワフルなので、ある程度の大きさまでは自動巻きで大丈夫です。しかし対応できないほど大物がきて手巻きでやり取りすることもあります。自動巻きの際、ドラグを締め過ぎるとラインブレイクするので締め込むときは少しずつ調整します。一般的には5㎏くらいに設定しておけばオールラウンドに対応できます。