かつて、オリムピックのグラスの磯竿に「わかさ」、「ちちぶ」という商品があった。
北九州のチヌファンに絶大な人気を誇った若松敬竿さんが1969年に著述した記事には同じくオリムピックの「のと」「どとう」さらに大和(現在のダイワ)の「ひらど」という竿名が登場している。
この時代の竿に号数表示はなかったのだ。時代が下ってやがて1号、2号、さらには1.5号、1.75号などと細かな設定が誕生するに至る。
竿の号数とはハリスの太さ

「わかさ」や「ちちぶ」、「ひらど」といった竿には、もちろん調子や硬さなどの個性があり、釣り人は自分の好みに応じた商品を選んで使っていた。
しかし、すでに愛用しているベテランなら問題はないが、釣りのビギナーにしてみると号数表示のない竿は選択の基準が分からない。
小中型のグレ釣りを楽しみたい、離島で大型のグレを仕留めたい、チヌ釣りしかしないなどなど、釣り人の要望はさまざまにあるのだ。
その点、現在の標準表記である1号、2号は非常に分かりやすい。メーカー間でもほぼ共通しているから迷うこともない。

ここで、号数のおさらいをしておこう。
改めて説明するまでもなく、磯竿の号数は適合ハリスの数字を示している。1号竿の適合ハリスは1号、2号竿は2号ハリス、3号竿は3号ハリスというわけだが、?と感じる釣り人も少なくないはずだ。
1号竿に1号ハリス? これには間違いなく違和感を覚える人が多いのではないだろうか。さらに、では0号竿ならどうなるのかという疑問も湧く。0号ハリスなどあるわけがないし。
つまるところ、この数字は最初に設定するときの目安だったとは推測できるが、磯釣りで1号ハリスを使う機会はほとんどない。
また、近年登場した0.8号竿だと0.8号ハリスになるが、これもあり得ない。個人的な感覚で判断すると、竿の号数と適合ハリスは次のようになる。
○0号竿/ハリス1.25~2号
○1号竿/ハリス1.25~2号
○1.25号竿/ハリス1.25~2号
○1.5号竿/ハリス1.25~3号
○1.75号竿/ハリス1.5~3号
○2号竿/ハリス1.5~5号
もちろん、異論をお持ちの方は大勢いらっしゃると思うが、ここではこの指標に従って話を進ませてもらう。
適合ハリスはどこまで信用できる?

ここで適合ハリスの意味を考えてみよう。
1号竿の場合、適合ハリスは1.25~2号としたが、では3号ハリスを使うとどうなるのだろう?
3号ラインの標準直径は0.285㎜で、引っ張り強力は12lb=5.4㎏になる。引っ張り強力とは両端を持って引っ張ったときの荷重(重さ)を表している。
強度と強力の違いはいずれライン(道糸&ハリス)の項で説明しよう。
したがって、5.4㎏以上のパワーで引っ張ると3号ハリスは切れるという計算になるのだが、道糸の伸びと竿の弾力があるから計算以上のパワーを発揮する。
そのパワーを6㎏と仮定したとき、では1号竿にそこまでの強度はあるかということになる。答えはノーだ。それだけの荷重をかけると折れてしまう。
1号竿の標準ハリスは1号だから、1.8㎏までの魚のパワーには耐えられる。

だが、それ以上は保証できないというのだ。とはいえ、前述したようにラインの伸びと竿の弾力がある。それを存分に利用すれば2号ハリスの3.6㎏までは十分耐えられるはずだ。
勘違いしないでほしいのだが、ハリスの引っ張り強力はあくまでも静荷重だ。抵抗しない魚を抜き上げる場合の重さを示している。抵抗する魚のパワーは加算されていない。
引きにひたすら耐えたとすると、魚の重量以上のパワーが加わることになる。それをどうかわすかが技術になる。
0号竿と1号竿、1.25号竿

0号竿、1号竿、1.25号竿の適合ハリスはいずれも1.25~2号と表示した(個人の感覚だが)。
では、0号、1号、1.25号の違いはなにを意味するのだろう? そこには数字では表せない違いがある。
それが腰の強さで、ハリ掛かりした魚をコントロールする能力といえば分かりやすいだろう。
0号竿で食わせたとき、魚が大きいと余裕がなくなり、耐えることだけに集中しなければならず、とても動きをコントロールなどできない。
だが、1号竿なら余裕ができ、1.25号ならこちらが優位に立てる。磯際や底近くでグレを食わせる場合はぜひ1.25号にしていただきたい。
魚のパワーは種類やサイズによって異なるし、同じ魚、同じサイズでも時期によって違う。
当然、個体差もある。そのため、グレの40㎝クラスだから、チヌの50㎝オーバーだからこの竿、このハリスとは一概に決められないのが釣りの難しさ(面白さかな?)といえる。
いうまでもなく、取り込みの技術も大きく影響している。ビギナーなら太いハリスと硬い竿が必要だし、ベテランは細いハリスと軟らかい竿でも十分取り込める。
さらに、腰が強いと重たい仕掛けを投入しやすいというメリットがある。自重10gまでのウキなら0号竿でもなんとかなるが、15gを超えると投入しづらくなる。向かい風では特にそれがいえる。
著者:尾田裕和