釣りを始めても魚が釣れなければ面白くない。そんなことで釣りにハマらない人も多い。
その点、夏はエサ盗りも活発に動くため、ウキへのアタリが出やすく退屈しない。まして、釣れた魚が銀色に輝く格好良い魚なら、なおさら楽しく感じるだろう。
狙いは堤防のチヌ。ウキフカセ釣りを始めるにはとても適したシーズンである。
仕掛けを決定する


底付近を狙うのだから、潮の干満による水深の変化が読み取れる、半遊動か移動仕掛けが基本だ。水深が竿1本ない場所なら、固定仕掛けでも問題ない。
仕掛けを組み終えたら、釣り場の水深を測ることから始める。市販のタナ取りオモリなどを使ってきっちりと水深を測ろう。
その測り方にもコツがある。適当にやるのではなく、ある程度広範囲を知っておくことに意味があるのだ。


魚探で底の地形を把握するように、水深を測りながら海底の様子を判断していく。
釣りに慣れてくると怠りがちなことだが、釣果が上がらない人は初心に戻り、水深を測ることから始めるといいだろう。
狙う深さはシビアに設定する

まず最初に狙うタナは、海底から30㎝以内に設定する。
しかし、下げ潮狙いでは水位が下がるに従い、根掛かりなどが起こって水深が浅くなったことを知らせてくれるが、上げ潮狙いでは再度水深を測るまでどれくらい水かさが高くなったかわかりづらい。
堤防の水の跡などで判断できるが、最初は勘に頼らず水深を測り直すようにすること。
また、最初に設定したタナで釣れない場合、狙うタナの微調整が必要だ。まずは少しずつ浅く設定してみよう。一気に上げるのではなく、10㎝単位くらいで徐々に対応していく。
チヌはマキエにつられて浮くこともあり、釣り場の水深が10mあっても、わずか2〜3mで釣れることもあるほどだ。
特に夏時期はその傾向があり、どうしても釣れないときは仕掛けを軽くして、上層からゆっくりと狙える全層や全遊動が有効なシーンも多い。
逆に魚の活性が全体的に低い場合、底にツケエを這わせるのも効果的だ。

ベタ底をチヌが泳いでいたり、底にあるエサを捕食しているケースもあるため、海底に注視しているチヌに見つけてもらえやすい。
マキエは内容も量もケチらない

底付近を狙うわけだから、マキエは底に溜まるくらい重いものが理想だ。しかし、マキエが全て底に溜まるようでは、流れに乗せて遠くのチヌを寄せることができない。
全体的に比重が重いマキエに仕上げ、バラけて流れに乗る素材も配合されているものが望ましい。

堤防でオキアミを大量に使用する釣り人は少ないが、当然入れたほうが集魚力が高くなる。これはだれもわかっていることであるが、経済面からもケチりがちな素材であることは確かだ。
しかし、配合エサだけのマキエだと煙幕効果のみとなり、底に溜める要素や、チヌの食い気を倍増させる効果が薄れてしまうので、少量でも入れるようにしたい。
最初はケチらず、まずは万全のマキエで挑んでポイントを見つけ、釣れるパターンを掴んだら次回からマキエをケチればいいのだ。
チヌ釣り用のヒシャクカップはクロ釣り用に比べて大きい。1度に多くのマキエを撒くことが可能だ。
その理由はさまざまだが、こう考えてみてはどうだろう。
①マキエを多く撒いてチヌを寄せなければいけない。
②何杯も撒くよりも効率的だから。
③大きな塊にして、より沈みやすくしている。
どれもマキエの量の多さにつながる内容である。

1日に使用するマキエの総合量からするとクロ釣りのほうが多い傾向にあるが、仕掛け投入回数とカップのサイズから計算すると、チヌ釣りのほうが1投に対するマキエの使用量が多いことが分かる。
結論を言えば、1投ごとのマキエは充分に撒くことが大切ということだ。居着いているチヌをおびき寄せるためのマキエと、回遊してくるチヌの足を止めるマキエを耐えず撒き続けるのが大切だ。
ツケエは最低でも2種類用意

この時期、仕掛けを上げるたびにツケエがないというよりも、仕掛け投入から数秒で取られてしまうことが多い。ここで重要なのが、仕掛け投入からツケエが取られるまでの時間だ。
例えば、仕掛け投入から回収まで3分だとしよう。しかし、ツケエは10秒と持たない場合、2分50秒はチャンスを逃していることになる。
チャンスを最大限に活かすためにも、エサが毎回取られるようであれば、仕掛け投入からカウントして、何秒でなくなっているか、どこで取られているかを確認しておこう。
ツケエが今までよりも残り始めたら、チヌが接近してきた合図だ。
用意しておきたいツケエは、オキアミLサイズと練りエサ。練りエサはエサ盗り対策としても有効だが、それ自体がマキエの効果もある。
エサ盗りが多い場合、上〜中層でかなりの量のマキエを食べられてしまう。
必然的に底に溜まるマキエの量は少なくなり、流れに乗るマキエも減ってしまう。練りエサはそれ自体が溶けながら流れる集魚力を持っているため、チヌに見つけてもらえる可能性が高くなる。
エサ盗りに対抗する

エサ盗りの猛攻に負けてしまうことも多いこの時期、オキアミや練りエサだけでは歯がたたないこともある。
こういうときはチヌの雑食性を利用し、さまざまなツケエで対抗する。
代表的なエサ盗り対策のツケエは、コーン、スイカ、サナギ、ムギ、ムシエサ、ボケ(アナジャコ)、貝類、カニ類など、以上に限らずもっと多くのツケエが用いられている。
これだけ雑食性が強ければ、どんなツケエでも釣れそうな気がするのだが、釣り人側はそうはいかない。

普段使い慣れていないツケエは、釣っていても釣れる気がしないため、すぐに使い慣れたツケエに戻してしまう。
練りエサを使い慣れない釣り人が、すぐにオキアミへと戻してしまうのもそうである。とはいえ、オキアミが食いがいいのは確かであるため、できればそれで食ってほしいものだ。
しかしどうしてもエサが持たない場合、どうせ釣れないのであればいちかばちかで試してみる価値は充分にある。
前記対策用のツケエを用意していない場合は、釣り場にある貝やカニ類を使ってみよう。どちらも落とし込み釣りなどで使われる実績の高いエサなので、コーンやスイカを使うよりは信じられるだろう。

カニに至っては、夏場はそれでしか釣れない釣り場もあるほどなので、オキアミと同レベルで使えるはずだ。
ただし、底を這わせるとカニは岩穴に潜ってしまうため、少し底を切ったタナの設定が必要だ(死んだカニでわざと底を這わせる狙い方もある)。
アタリがあっても一気に持って行かないことが多いため、オキアミよりも遅めのアワセを心がけよう。
そしてもう一つが巻貝の「ビナ(ニーナ)」だ。
付け方はカラを割って中を取り出し、硬い部分にハリを刺すだけだ。
潮の干満と狙う時間帯

夏の日中は釣り人のほうが暑さで参ってしまうため、狙うなら短時間釣行か夜釣りがやりやすい。
短時間で釣果を稼ぎたいのなら、下げ潮狙いがおすすめだ。場所によって差はあるが、満潮で湾内などに入ってきたチヌを下げ潮で狙うのが目的で、釣れる時間帯としての実績も高いからだ。
潮が引くと底が見えるような場所でも、干満差が大きな場所では充分に狙えることも理由にある。
この時期、河口付近の濁りや砂浜の濁りなどがあれば、チヌはかなりの浅場まで寄ってくる。そういう場所は釣り人も少ないから、釣り場確保にも困らない。
渚釣り自体は古くからある釣りだが、近年クローズアップされるようになったのも、上記の要素を含んでいるからだ。
そして夏のチヌの引きは強い。特に浅場で掛けたチヌはワンランク上の階級の引きで楽しませてくれる。他の時期にはない暴れるチヌの引きを堪能できるのもこのシーズンだ。
チヌの群れと大型狙い

夏に釣れるチヌは30㎝未満の個体が多い。チヌは大型になるとほとんどが雌になるため、釣れるのは雄が大半ということになる。
おまけに群れで行動していることも多く、釣れるサイズがバラバラではなく、釣れるサイズ全て小型ということもめずらしくない。
こんな中で大型を狙うのは難しく、次の群れを待つか別の日に挑戦するしかない。
逆に言うと「ここは小型しか釣れない」ではなく、釣れることは実証できたので、通えば大型が出る可能性があるということだ。
大きなサイズを釣り上げるには運も左右されるが、釣り場に通うという努力は報われるはずだ。
堤防釣りシミュレーション
シミュレーション①

まず、上の図を見てあなたならどこに釣り座を構えるだろう。
ある程度釣りに慣れた人なら、図に自分なりの潮の流れが浮かんできただろう。それを軸に釣り座を決めるのだが、ほとんどの人が堤防の先端か曲がり角を選んだと思う。
解答例

初めて行く釣り場の場合、まずはAの先端付近を釣り座に構える人が多い。どの向きに潮が流れても対応でき、チヌの回遊コースにもなるからだ。
Bも同様に潮の変化が期待できる場所であり、横にテトラがあるため居着きも期待できる。
Cは水深が定かではないが、夏場のまづめ時などには有効となりやすいポイントだ。
シミュレーション②

では、次の図を見るとどうだろう。今度は海底の様子がわかるようになった。
微妙に釣り座が変わったのではないだろうか。
チヌ狙いだけでなく、他の魚を狙う際もやはり海底の地形は攻める対象として参考になる。なので、少しでも地形を把握するためタナ取りは重要なのだ。

足下だけでなく仕掛けを流す範囲も把握しておこう。
解答例

Aは障害物があり釣る目安となる。もちろんマキエも溜まりやすくチヌを寄せやすい点でも有利だ。
Bは水深の変化があるカケアガリが狙える。沖の一段深くなったカケアガリも攻めることが可能だ。
Cも同様で左右どちらの潮でも効率良く仕掛けを流せる。
Dは養殖用イケスのため、日々のエサやりがあるはずだ。そういう場所には魚が集まりやすく、また、隠れるのにも絶好の場所となる。
シミュレーション③

潮の流れがわかったところで、仕掛け投入位置やマキエを撒く場所が見えてくる。
仕掛けは潮に流されるものなので、当然流れに合わせた釣り方が必要となる。
シミュレーション④

次は風が出てきた。軽い仕掛けを使う釣りの多くは、横風が一番厄介である。いくらA級ポイントでも、アタリがとれなかったり仕掛けが投げづらければ釣りどころではない。
こういう場合は風を背に受けるか、ダメなら正面から受けるポイントへ移動する。
このように、釣り座を決める基準はさまざまな条件を加味して決定していくのが基本だ。
釣りやすいというのが一番ではあるが、釣りやすい場所ではなく釣りやすい条件、そして魚が潜んでいる条件の場所を選ぶようにしよう。