
山口美咲
やまぐちみさき
トーナメントに励みながらも、プライベートでは大物釣りに夢中。シマノ、オーナーばり、マルキユー、釣研フィールドテスター。Zeque、ルミカフィールドスタッフ。
「磯釣り」「フカセ釣り」このワードを聞いてどんなことをイメージするのでしょうか?
正直なところ私自身、若い人や女性の少ないジャンルだなぁと感じます。最近はアウトドアブームというのもあり、釣りをする方も増えてきているみたいですね。
しかし、エサを触る必要のないルアー釣りや、手軽に始められるサビキ釣りやちょい投げ釣り、また落として巻くだけで簡単にマダイが釣れるタイラバを始めとした船からの釣り、フカセ釣り以外の釣りは大盛り上がりなのは見ての通り。
フカセ釣り大好き人間としては、少し寂しい気持ちなのであります…。

やっぱり磯釣りが好き
私はフカセ釣り師の親の影響で、物心ついたときには磯に立っていました。当時は今のようにウエアのサイズが豊富ではなく、子供用の小さなアイテムを揃えるのに苦労したことを覚えています。
初めての釣りはフカセ釣り。そこから何年もフカセ釣りだけをやり続け、子供のころはずっと「釣り=フカセ釣り」だと思っていました。

だんだんと釣りにはいろいろな種類があると知り、ルアーは格好良い! とか、船は大きな魚が釣れる! とか、なんとなくのイメージだけでしたが興味が湧き、お小遣いを溜めてルアーロッドを一本購入。
初めて行ったメバリングでは、10㎝ほどのメバルを釣って喜んでたような……。
お世話になっていた渡船の船長にお願いして、タイラバを経験させてもらい、60㎝ほどのマダイが釣れたときは、これを磯で釣るとどれほど大変か……。
子供ながらにそう感じた記憶があります。
いろいろな釣りを経験した上で、やはり私は磯での釣り、フカセ釣りが好きだなぁと改めて感じ、今に至ります。

フカセ釣りはとにかく複雑で、お手軽……とはほど遠い釣りだと思います。
事前のオキアミ解凍から始まり、マキエ作り、そして不安定な磯の上、仕掛けはウキを通すところから、小さなガン玉での浮力調整、釣りが始まれば、キャストやマキエの投入、ラインメンディング、魚が掛かれば障害物の多い磯では取り込みも難儀します。
よくよく考えてみると、この釣りは難し過ぎませんか?
だけど、そこに何より魅力を感じてしまうのがフカセ釣り師なのだと思います。
釣れない時間に考えること、海を見て、魚の居る場所やそれに合わせた仕掛け作りをすることが楽しいのです。
その1尾に対する価値を感じられる釣り。難しいからこそ、面白いのです。
これを魅力だと言うと、たいていの人は、「だったらもっと簡単に釣れる釣りがいい」って言うんですけどね。

磯はとてもダイナミック
また磯というフィールドもとても好きで、磯の上は非現実的な世界で、大自然、あまりにも開放的な環境に悩み事も飛んでいってしまいます。私は瀬戸内育ちなのですが、四国の西南部、太平洋の磯に行ったときには感動しました。
今まで見ていた磯とは全く違う、ダイナミックな磯。
その景色を見られただけで、その日の釣りが8割満足できるっていうくらい、今だに何度見ても感動します。

ただ女性はトイレ問題もあり、なかなか磯での釣りはハードルも高いですよね。
最近では、渡船にトイレが付いていて、見回りのときにトイレを貸してくれるところも増えてきました。またウエアも、女性向けの可愛いものや、小さいサイズも増えました。
女性に限らずですが、若い方もこれからフカセ釣りの存在を知ってもらい、フカセ釣りの活気を取り戻せたらなぁと思っています。
そして私は難しい釣りだからこそのトーナメントにも、力を入れています。一投一投の正確性や海を見る目、的確な判断力が求められる試合。
アイドルよりも磯釣りのトーナメンターの方が見ていてキュンキュンする私は変わり者でしょうか。

今はコロナの関係で、試合も止まってしまっていますが、これからの目標はクロで全国制覇をすること。ちなみにチヌは数年前に全国制覇達成することができました。
趣味とは言え、目標を持って真剣に取り組むことができるのも、日頃の活力になってとても楽しいです。

少し前までの自分は、フカセ釣りは誰でも手軽に楽しめるとアピールしていましたが、やはりそれは違うなと。
これからは、難しいからこその魅力を伝えていきたいと思います。 全てが自分の組み立てたもので出会える魚は、「釣れた」ではなく「釣った!」なんです。この喜びを少しでも多くの方に感じていただければと思っています。
