初めてのタックル選び
初心者だからこそ、自分に合ったイシダイ竿を選ぶことが釣果への近道となります。
例えば送り込みが上手にできなくても、食い込みの良い竿ならイシダイが走ってくれるし、小さなアタリが取りやすいとか、掛けた魚を楽に浮かせられるとか、高性能のロッドは初心者にこそメリットがあります。
「最初は安いものでいい」などと安易に考えてロッドを選ぶと、すぐに後悔することになるはずです。

竿選びで最も重要なテーマとなるのは長さの選択で、これは釣行先となるフィールドの条件によってベストチョイスが異なってきます。
例えば南方宙釣りが主体となる長崎県の男女群島や福岡県の宗像沖ノ島では5m以下の竿が使い勝手が良く、長崎県の対馬では遠投ができる5.4mの竿が活躍してくれます。
この点は、もし身近に先輩イシダイ師がいれば、ぜひともアドバイスを受けたいところ。
一方、独学でイシダイ釣りを始めようという人は、自分のフィッシングスタイルが確立されていないので「手持ち」とか「遠投」、「置き竿」はたまた「硬調」といった竿のコンセプトを聞いてもピンとこないのは当然のことです。
それでも1本目の竿を選ばなければ先へと進めません。

ここで無難な選択をするのなら、オーソドックスな仕様である5mのMHクラスということになります。
MHの表示が見られない竿でも、オモリ負荷が、15~45号程度となっていれば、同クラスの竿と判断できます。この仕様であれば操作性に関しては問題ないでしょう。
欲しい竿のスペックが具体的になったら、実際に釣具店で候補の竿を握ってみることが肝心です。他人の評価よりもデザインも含めた自分の好み、手にしたときに感じるフィーリングを大事にした方が最終的に納得がいきます。
穂先を釣具店のスタッフに持ってもらい実際に竿を曲げてみることができれば、魚を掛けたときのロッドのパワーを確認できます。
リールに関しては、カウンター付きのリールを選ぶことが上達の近道。大きさは18号か20号のナイロンラインが150m巻けるクラスが標準で、それより大きいリールは遠投用となります。
主な仕掛けパターン

イシダイ釣りの仕掛けにはさまざまなパターンがありますが、基本的には宙釣り仕掛け(本仕掛け)と、テンビン式仕掛けの2種類です。
ラインがオモリの中を通って遊動式となるのが宙釣り仕掛けで、ラインに天秤を通すテンビン式仕掛けは根掛かり時にオモリのみをロストすることが念頭に置かれています。
テンビンにナイロンのラインを結んでオモリをセットする仕掛けは、根掛かり対策や急潮対策として有効ですが、足元を狙う場合はシンプルな宙釣り仕掛けの方が使いやすいです。

一方で、宙釣り仕掛けは遠投には不向きで、遠投に特化した形状のテンビンなら楽に飛距離を稼げます。
このように状況にマッチした仕掛けを選ぶことで、イシダイに食わせやすい状況を作り出すことができます。
瀬ズレワイヤーは足元を狙う宙釣り仕掛けでは必須だが、遠投性能を優先する遠投テンビン仕掛けでは、空気抵抗が増す要因となるので、使用されないパターンが一般的となっている。
オモリの種類

宙釣り仕掛けに使用するオモリは真空オモリかナツメオモリ。いずれもラインがオモリの中を通る構造ですが、真空オモリはサルカンが通り抜けるほど穴の径が大きくなっています。
ナツメオモリから発展した真空オモリは、ナツメオモリよりワイヤーの通りが良いため、エサを口にしたイシダイに違和感を与えず、さらには瀬ズレワイヤーを切らずにオモリの交換ができるというメリットもあります。
もともと宙釣り仕掛けにはナツメオモリが使用されていましたが、瀬ズレワイヤーに少しでもキンクがあるとスムーズに抜けないため、イシダイが走らないことがありました。
そこで考案されたのが、キンクしたワイヤーでも通りやすい真空オモリだといわれています。

真空オモリのデメリットとして挙げられるのは、遠投しようとするとオモリがサルカンを通り抜けて道糸部分にズリ上がって着底したり、オモリの上の部分が広いためハリが絡むなど、トラブルの原因となりやすいことでしょう。
ナツメオモリの愛用者は、繊細な釣りを好む傾向があります。10号程度の軽いナツメオモリは、流れが速い場所では潮に乗り、流れの緩む地点で落ち着きます。
これはマキエが効く場所までツケエを運んでくれるということで、魚が集まるポイントを重点的に探ることが可能となります。
また、潮が速いとイシダイは浮き気味となってカベやタナに着きますが、このような状況においては細長いナツメオモリは潮の抵抗が少なく、カベやタナに這わせやすくなります。
テンビン仕掛けに組み合わせるオモリは六角オモリが一般的で、遠投釣法には50号程度が使われます。根掛かりの多い場所ではホゴオモリというスリムタイプのオモリの人気があります。
仕掛けの作り方

上物釣りでは決して使うことのないワイヤーですが、底物釣りではワイヤーを使いこなさなければ仕掛けを自作することができません。
丁寧に作られた市販のイシダイ仕掛けも多いですが、一人前のイシダイ釣り師を目指すならワイヤーの結び方はぜひマスターしておきたいところです。
ワイヤーで仕掛けを製作するにあたって必要な道具はニッパーだけです。ワイヤーのヨリに逆らって仕掛けを作ろうとするとほつれてしまう点に注意すれば、意外と簡単に作ることができます。
釣り方の基本

何度も打ち返しを繰り返すことでエサの存在をアピールします。
そのたびに狙ったポイントに仕掛けを落ち着かせることが釣り方の基本となりますが、潮の速さに応じた仕掛け投入点の見極め、適切なラインメンディングによるスムーズな仕掛けの送り込みは難易度が高くなります。
オモリは仕掛けが確実に落ち着く号数を選ぶことが基本ですが、軽いオモリを使った方が潮の変化を感じ取りやすいです。

宙釣りにおける代表的なテクニックは、送り込みと誘い。送り込みは、アタってきたイシダイの動きに追随するように、一定のテンションをキープしつつ穂先を下げていきます。
それ以上の送り込みが必要な場合は竿を構えた腕を前方へ動かしていくことで、スムーズな食い込みを促すことができます。
誘いはイシダイからツケエをそっと遠ざけることによりツケエを目立たせ、食い気を誘うテクニック。
誘いが有効な場面は、落ち着かせた仕掛けに何ら反応が出ないケースや、コツコツという小さなアタリがあったのに、それ以上の発展が見られないケースで、ツケエをスーッと30~50㎝ぐらい上げて止めてやることで、明確なアタリが出ることがあります。
アタリと取り込み

アタリの待ち方はロッドを持って構える手持ちと、竿受けにロッドをセットする置き竿の2通りがあり、足元狙いでは手持ちスタイル、遠投釣法では置き竿スタイルが主流です。
置き竿でアタリが出た場合は竿が舞い込むまで待つか、途中から手持ちに切り替えるパターンで対応しますが、置き竿の状態で大物が掛かると、テコの原理により竿受けからロッドを外せなくなることがあるので要注意。
途中から手持ちに切り替える場合は、イシダイに違和感を与えないよう細心の注意を払いたいです。
取り込みは小型なら抜き上げ、大型は波を利用して磯の上にズリ上げるか、タオルなどを利用してワイヤーをつかんで引き上げます。ここで肝心なのは、あらかじめ取り込みを行う足場を決めておくこと。より確実にキャッチするためにはハリの掛かり具合を確認し、掛かりが浅いようならタモを使いましょう。
ツケエの種類

イシダイ釣りで使用される主なツケエは、ウニ類、貝類、甲殻類で、軟らかいツケエと硬いツケエをエサ盗りの状況に応じて使い分けるのが基本です。
複数のツケエを用意すればエサごとの反応の違いから戦略を立てることができます。
ウニ類では、ガンガゼ、バフンウニ、シラガウニ、貝類では赤貝(サルボウ貝)、サザエ、セト貝(イガイ)、トコブシ、甲殻類ではヤドカリ、トッポガニ(イボイワオウギガニ)、マガニ(ショウジンガニ)、イセエビなどがツケエとして使用されていますが、中でもガンガゼ、赤貝、サザエは比較的入手しやすいです。
エサの入手ルートに関しては、利用する渡船に相談すれば情報を得られるでしょう。現地で調達したジンガサ(マツバガイ)を使って、貴重な1尾を仕留めたという話も多くあります。
ガンガゼの使い方

一番人気のツケエは、集魚効果が高くて食い込みが良く、エサ盗りが多い状況にも対応できるガンガゼ。ガンガゼは管理が悪いと活きが悪くなるので、ライブウエルに海水を張って活かしておきます。
ガンガゼは長いトゲを持っているので、ハサミでトゲをカットして1~2個掛けで使うのが一般的です。
ウニ通しを使って口が下になるようにしてハリに装着するが、この作業の際にトゲが指に刺さると抜けなくなり、長期にわたって指先に残るので要注意。

素手でトゲに触れないようにウニばさみ(トング)を使うとよいでしょう。
殻の部分に切れ目を入れることで集魚効果を高めたり、トゲを残してエサ盗り対策としたり、芯のみを使用することで食い込むまでのレスポンスを早くさせたりと、さまざまな工夫を凝らせるのもガンガゼの長所です。
芯掛けにアタリが出れば本命である可能性が高くなります。
ガンガゼの殻は意外ともろいので、遠投する場合は力が掛かり過ぎないよう気を付けましょう。
殻のもろさを利用した作戦として、投入したガンガゼを竿を強くシャクることでハリから外し、マキエとして使うこともできます。
赤貝の使い方

赤貝は柔らかいためエサ盗りの多い時期には出番は少なくなりますが、春先の低水温期にはバツグンの威力を発揮します。
基本的な装着法は荒割にして数珠掛けで、割った殻は付いたままでもよいですが、少しでもエサ持ちを良くしたい状況では塩でシメるこることも一般的に行われます。
赤貝はタテに持ち、とがった部分を叩けば上手く荒割りの状態にできます。たくさんの赤貝を割らなければならないので、作業は速いにこしたことはないですが、ハンマーで地面を叩くととても手が痛いので要注意。

そんなミスを防ぐため、打面をえぐった木づちを愛用するベテランもいます。
赤貝のマキエに赤貝のツケエという組み合わせはイシダイに違和感を与えにくく、乗っ込みシーズンの数釣りには欠かせないエサとなります。
春、赤貝がメインのエサとなる時期に1日分として準備する生の赤貝は10㎏で、塩ジメのために1㎏の食塩を準備します。
赤貝を使った釣りの面白さは、自分の持てるテクニックを最大限に生かした釣りができること。
マキエワークでイシダイを浮かせ、数珠掛けの赤貝で誘ったり送り込んだりして走らせる宙釣りのプロセスには、イシダイ釣りの楽しさが凝縮されています。
サザエとヤドカリの使い方


古くからツケエとして使用されてきたサザエは遠投しても外れにくく、エサ盗りが多いときは赤身のみ、食い込みを重視する場合は白身のみを使うなどさまざまな工夫ができます。
ハンマーで殻を割って蓋の部分を取り、硬い赤身にハリを刺すのが一般的な装着法。
ウニ通しを使って小ぶりなものを2~3個ハリに刺したり、大ぶりのものは小さくナイフでカットしてコンパクトに装着してもよいです。
ツケエとして使わない殻やフタの部分は海に投入すればマキエとなります。ヤドカリは入手が比較的困難なツケエですが、イシダイ釣りの特効エサとして人気があります。
ツメや足をカットしてウニ通しを使ってハリに装着しますが、軟らかい胴はエサ盗りには弱いため、瞬殺されるようならツメの部分もツケエとして使います。
マキエの重要性

イシダイ釣りにおけるマキエの役割は上物釣りでのマキエと同様に、そこに居る魚にマキエを食わせることで、食い気を促す効果を期待するパターンのほか、何日間にもわたって同じ場所にマキエを入れ、イシダイのポイントを作るパターンがあります。
マキエとして使用されるエサは釣具店で販売されているウニガラ、赤貝チップ、貝類やウニガラを使用した釣具店オリジナルマキエ、マルキユーの集魚材「デカバン」「イシダイ用ウニだんご」のほか、自分で採取したカラス貝、ツケエ用の赤貝やガンガゼをつぶしたものなどが一般的です。
マキエは釣りを開始する前に狙うポイントに投入しておくことが基本で、釣りをしている間も少量のマキエを頻繁に撒くことが効果的とされています。
マキエは潮に流されながら海底へと沈んでいくので、投入点は必ず狙うポイントよりも潮上とすることです。