
猪熊博之
いぐまひろゆき
グレ・チヌのフカセ釣りで次々と新しいスタイルを確立してきた磯釣り界のトーナメンター。主な戦績は第30回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権優勝、第15回、第16回、第19回釣研WFG優勝、など。がまかつフィールドテスター、釣研インストラクター、東レ・モノフィラメントインストラクター、マルキユーインストラクターとして活躍中。大分県津久見市の瀬渡し船アイジーマリン船長。

今回のテーマは同調。ツケエとマキエを同調させようとする際に、マキエの沈下速度とツケエの沈下速度を考慮して釣るとよく釣れる場合があるというお話です。
同調とは何か

マキエとツケエを同調させることがフカセ釣りの基本であるのは周知の通りですが、では「同調させる」ということは、具体的にはどういうことでしょうか?私が考える同調は次の2点です。
①マキエの軌跡とツケエの軌跡を合わせる。
②マキエとツケエの沈下速度のギャップを調整して合わせる。
まず、①の軌跡ということでいえば、マキエは重力に従って下へ素直に落ちていきますが、仕掛けを張ってツケエを落としていけば、仕掛けがなじむある一定のタナの点でしかマキエとツケエは合いません。
そもそも、その点でマキエとツケエが合ったとしても見かけ上で合っているということでしかありません。
次に②の沈下速度ですが、ハリの付いたツケエは、マキエよりも沈下速度が速いため、グレの食うタナが深くなるほどマキエと合わなくなります。
マキエを先打ちする理由

マキエとツケエを同調させるといっても、ある程度深いタナでは、マキエとツケエがどのような状態になっているかは実際に見ることができません。
そこで海中を想像するわけですが、私が持っている同調のイメージは、マキエの中にツケエを置くというよりも、ツケエにマキエと同じ動きをさせて同調を図るといったものです。
この同調のさせ方は、潮が動かないようなケースでは、特に大きな威力を発揮すると思っています。
ツケエにマキエと同じ動きをさせるために、強く意識しなければならないのは、マキエの沈下速度とツケエの沈下速度のギャップです。

ハリを装着したツケエのオキアミは、オキアミ単体よりも比重が大きいため、撒いたマキエのオキアミより沈下速度が速く、仕掛けを投入してからマキエを打つのではマキエと同調しません。
だから、必ず先にマキエを先に打って、時間をズラして仕掛けをそのマキエの真ん中に投入します。
仕掛け投入のタイミング

例えば、オキアミの一般的な沈下速度を、目安として0.8m/10秒とします。
それに対して、ハリを装着したオキアミの沈下速度は、目安として経験上、およそ1.5倍の速度で沈んでいくので、1.2m/10秒となります。
これからすると、2ヒロ(3m)のタナまで沈むのに、オキアミは37.5秒、ツケエは25秒となるので、マキエとツケエを2ヒロで合わせようとするなら、先にマキエを投入後、約13秒後に仕掛けを投入すればいいということになります。
さらに、5m(竿1本)の水深にマキエのオキアミが到達するのに約63秒(1分以上)を要しますが、ツケエは約42秒で到達し、20秒以上の沈下速度の差が出てきます。
この時間差を補うためには、必ずポイントへ先にマキエを打って、意識的に仕掛け投入の時間をズラすことが必要で、仕掛けを正確なコントロールでマキエの真ん中に投入する一連の作業が大切になってきます。
とにかく焦らず、一投一投を丁寧に正確に釣る技量が必要ということです。
ツケエの落とし方

私はツケエの「落ち込み」と「演出」でマキエと同調させて食わせています。
ツケエの「落ち込み」とは、上方から下方へと移動していく動きのことを意味します。グレに限らず、魚が浮いてエサを捕食するとき、中層に止まっているエサよりも上から下へ落ちて動いているエサの方が断然に食いがいいということです。
ツケエの「演出」とは、マキエとツケエの動きを同じにするということで、沈下していく動きの軌跡を同じにするということです。
グレがエサを拾うとき、目立つエサや動きに違和感があるエサはパスします。マキエの動きとツケエの動きが違えば、ツケエだけが動きが異なるので食おうとしません。
だから、より効率よくグレのアタリを拾いたいのであれば、マキエとツケエの軌跡も合わせるように仕掛けを流すことが大切といえます。

流れがない水中では、マキエは真っすぐに下へと落ちていきますが、仕掛けが張られた状態のツケエはウキを支点として弧を描きながら馴染んでいきます。

これでは軌跡が合っていないので、マキエとツケエが同調しているとはいえません。そこで私は、投入した仕掛けを引き戻さないことで、ツケエをフリーフォールで落としています。