タックルバランスの基本理論
堤防で30㎝クラスのグレを狙うのに太号数の道具はほとんど必要ないし、離島の尾長狙いでは細号数の道具は使い物にならない。
それを、さらに細かく使い分けた「自分の釣り方にあった道具の選択」が最良のタックルバランスである。

他人から押し付けられた道具や、尊敬する人が使用している道具をただ真似て使っても、それは最適なバランスとはならない。
自分の力加減や動作、釣り方に合わせた選択が重要となってくる。100人いれば100通りの「タックルバランス」ができ上がるが、ある程度の基準を満たすと必然的に絞られてくる。
要点をあげると……。
●疲労度が少なく集中力が持続でき1日中使用できる道具の選択。
●自分の釣り方にあった道具と仕掛けの選択。
●釣り場の環境や自然条件に合わせた衣類、道具の選択。
●当日狙う魚の魚種、サイズに合わせた仕掛けの選択。
●愛着がある道具。
以上のことに気をつけてタックルバランスをコーディネートすることを心がけよう。
バランスを取る順序
対象魚がグレならば、必然的に竿はグレ竿に決まる。
号数については、魚のサイズが数㎝単位で変わるたびに竿の号数を使い分けている人はいないだろうし、持ち替えることが良策とはいえない。
それに最初から小さなサイズを狙って釣行する人もほとんどいないだろう。
だとすれば、目標とする魚のサイズに合わせたタックルを選択することになる。
- 対象となる魚種とサイズ、使用するツケエに合わせたハリの種類と号数を決定。
- 魚のサイズに合わせたハリスの号数を決定。
- 自然条件、釣り場に合わせたウキの種類を選択し、想定するタナに応じた浮力を選ぶ。
- 魚のサイズに合わせた道糸の号数を決定。
- 全体のバランスを考慮した竿の号数と長さの決定。
釣行前は魚をメインとして考えているが、いざ釣りを始めようと釣り場に着くと、使用する竿をメインに仕掛けを組み立てているのが現状だろう。
釣り場に着いて、狙うサイズを念頭に置き、タックルを組むようにすれば、アンバランスな仕掛けが組み上がることはないというわけである。
ハリのバランス

グレバリとチヌバリの大きな違いは、軸の太さと長さであるが、同じハリでも号数が違えば使えるハリスの号数に制約がかかる。
また、同じ種類のハリでもフトコロが広くハリのアールが大きいほど、魚が掛かったときに、ハリのアール部分に力が掛かりやすく伸ばされたり折れたりしやすくなる。同じ太さであれば、アールが小さいハリの方が強度面だけで言えば強いことになる。
どういう順序でハリの形状や種類を選択すればよいのか要点を挙げると……
●食いが悪いときは小バリにして食いを優先させる。
●食いが良いときはフトコロが広めのハリを選択し、掛かりを優先させる。
●使用するツケエの種類で、エサ持ちが良い形状のハリを選択する。
●ハリスの号数に応じたハリの大きさを選ぶ。
ということになる。
次にハリの重さについても重視しなければいけない。
もちろん、ツケエ(ハリ)が仕掛けの中で先行して流れてくることが前提となるが、全遊動や全層釣りなど、比較的軽い仕掛けを使用する場合、ハリの重量が大きく影響してくる。
特に0号以下の浮力のウキを使用する場合、太軸で重いハリを使用しただけで、仕掛けが入るスピードが変わってくる。
ガン玉で仕掛けが入るスピードを調整するよりも、より自然に仕掛けを流すためにもハリの重量で調整した方が、アタリが出やすく魚の食い込みも悪くならない。
ハリを決定する場合は、ハリの形状と重量を念頭において決めるようにする。

ハリスのバランス

フカセ釣りではカーボン素材のハリスが最も選ばれており、道糸に比べて沈降速度が速く擦れなどにも強い。
魚をバラす原因をハリスに絞ると、根ズレによるハリス切れや、魚の歯やエラで切られることが多い。
その原因を考えてみると……
- 釣り座の選定ミス。
- アワセのタイミングミス。
- 突然のアタリに対処できないミス。
- ラインを出すタイミングミス。
- ロッドワークミス。
- 取り込み位置の選定ミス。
この中で原因の大半が、ロッドを出すタイミングとロッドワークだろう。
名手や名人と言われる人たちは、これらのミスが極端に少ない。この人達の仕掛けを見て、ハリスや道糸が細いと感じたことはないだろうか? 魚の食い込みやすさを重視しているものの、ラインブレイクさせないロッド操作を始めとする技術力があるからである。
自分が体感したことがあるサイズよりも、わずか数cm大きな魚が掛かっただけでも、すごい引きに感じた経験が皆さんにはあるだろう。ハリスの号数選びは、自分が仕留めた魚のサイズにも比例していることであり、「このサイズであれば、この号数で十分獲れる」という信頼度にも関係している。
魚の食い込みを重視するなら細くして、取り込みを重視するなら太くする。まずは確実に取り込むことを優先に考え、それで食わなければ号数を落としていく方が順当であろう。 自分が取り込みたい魚のサイズとハリスの号数が標準号数となる。
道糸のバランス

道糸の号数を決めるものは「竿の号数」のバランスが重要となる。そして風が強ければ当然、号数が細い方が影響を受けにくく、使いやすいものとなる。
しかし、風の影響を嫌ってウキを沈め気味に使うことが多い場合、一概に細くするだけでは対応しきれない。道糸の号数を細くして全体のバランスを崩してしまうよりも、ハリスを長く取って対応した方が良い場合もある。
また号数を変えるよりも「サスペンドタイプ」と「シンキングタイプ」の両方を替スプールとして用意しておき、状況によって使い分けた方がよい場合もある。
さらにウキの浮力にも関係しており、特にウキの穴径も考慮して号数を選択することも大切だろう。
竿のバランス

対象にする魚種(口太か尾長)とサイズで号数を決定するのがセオリーだが、それにプラスしていろいろな要素が生まれてくる。
- 自分がよく行う釣り方。
- 釣り座や自然環境に合わせた竿の長さ。
- 魚を掛けたときのスタイル。
- 使用する道糸とハリスの号数の関係。
竿を購入する基準は、対象とする魚のサイズやよく釣行する場所で選択すればよいが、号数を全てラインアップするには経済的にも苦しい。

善処策は、使用頻度が一番高い号数の竿を、完全に使いこなすことにある。つまり、1本を使い倒し、その性能や自分との相性を完全に把握することである。
そのときに気を付けるべき点は……
- 竿を大きく立てて絞ってみる。
- 竿をラインと直線にして引っ張ってみる。
- 竿を横に寝かせ気味にして絞ってみる。
- 竿を腹に当てて竿を絞ってみる。
- ハリスの号数を細いものから太いものへと変更して試してみる。
この手順を踏んで、自分に合った竿の角度を見つけ出し、力の入れ加減でラインブレイクする限界点を体に覚え込ませると良いだろう。
しかし、ラインブレイクする前に竿が折れる確率の方が高いと言っても良いくらいでそうそうラインが切れることはない。
釣り場でゴミがハリ掛かした経験はあると思うが、ビニールや流木が掛かってもラインブレイクすることはなかったはずである。このことからも、無理をせず一定の力で引き寄せることが肝要となる。
実際に体感するには、ワンランク細いハリスで掛けてやり取りを修得した方が、よりリアルに経験値を積むことができるだろう。
