
現在、オキアミは当然のように磯釣りで使われています。グレ釣りではマキエの中心であり、ツケエとしてもこれがメインになっています。釣り人にとってオキアミは既成事実であり、なんの疑いもなくエサとして使用しています。しかし、それで本当にオキアミの実力を最大限活用できているのでしょうか。オキアミの秘めた実力を発見できればグレ釣りはもっと楽しくなるはずです。
オキアミの登場は釣りを変えた
オキアミが登場する以前のマキエは湖産エビと呼ばれるシラサエビ(モエビ、スジエビ)がメインでした。湖産というのは琵琶湖で捕獲されたものだったからで、オキアミに比べてはるかに高価であるためチビリチビリと足元に撒いていたものです。当然、ツケエも同じで、マキエは魚を寄せるためのものだったのです。
そのような状況でオキアミが登場し、釣り人がどんどん撒いたおかげでエサ釣りは一変しました。グレはマキエを投入されたところに群れ、ウキ下2ヒロで面白いように釣れたものです。一部のエリアではヒラマサが大量に湧いて、たくさんの釣り人がそれを目的に押しかけました。
しかし、そのような状況は長くは続きませんでした。釣り人が大量にマキエを投下したせいなのか、エサ盗りが湧いて水温が高い季節は非常に釣りづらくなりました。また、グレは食い渋りが常態化し、浅いウキ下でヒットする機会は減っています。必ずしもオキアミだけが原因ではないのかもしれませんが、現在はそういう状況にあります。
オキアミのメリットとデメリット

釣りエサとしてのオキアミにはいくつものメリットがあります。
①釣具店ならいつでもどこでも入手できる。
②年間を通してほぼ同じレベルの価格で購入できる。
③冷凍保存されており、解凍するだけで簡単に使用できる。
④身が白っぽくて見やすく、海に沈んでもある程度視認できる。
⑤重さは1〜2gで、単体ではゆっくり沈み、沈んでくるエサを待っている魚に強くアピールする。
⑥なによりも各種のアミノ酸が豊富に含まれており、ほとんどの魚が夢中で食べようとする。
その一方で、オキアミにはデメリットもあります。
①身が軟らかく、ツケエとして利用するとハリ持ちが良くない。エサ盗りにも弱い。
②太陽光を浴びると黒く変色し、逆に魚を遠ざけるようになる。
③消化が悪く、オキアミで満腹になると消化するのに三日かかるといわれている。つまり、翌日は非常に食いが悪くなる。
このようにメリットもデメリットもあるだけに、その点を十分理解していないとメリットを十分生かせないケースがままあります。オキアミを愛用している釣り人達はその点をしっかり把握していない可能性が高いです。
メリットの①②③は釣りに直接関係ないのでここでは省きましょう。重視しなければならないのは④⑤⑥です。そして、同時にデメリットの①②をカバーしなければなりません。デメリットの①は、特にビギナーには厄介です。つまんで装餌するだけでも思うようにはいかず、さらに仕掛けを投入しなければいけません。エサ落ちしても気づかないビギナーは多く、中級者でもしばしば同じ過ちを繰り返します。
さらに、エサ盗りの存在がある。軟らかいオキアミは即座にかすめ取られるため、水温が高い時期はハリにツケエが残っているかどうかを常に心配しなければいけません。
オキアミを工夫して少しでも長持ちするように努力するか、それともオキアミ以外のツケエを選択するかという決断を迫られることになります。
オキアミの種類を使い分ける

通常、釣りエサとして使用するのはナンキョクオキアミと呼ばれるもので、南氷洋で大量に捕獲され、我が国に運ばれます。したがって、厳密な意味でのオキアミの種類は一つでしかありません。
しかし、現実として、釣り人が入手できるオキアミはさまざまです。サイズの違いがあるし、色も違います。使う時点でカットしたりすり潰したりすることもあります。軟らかい身を引き締めるため砂糖や味の素を振りかける場合もあります。
人間の目からするとわずかな違いでしかないですが、グレの食いは際立って変わったり、微妙に変わったりします。たとえヒット率が5%しか上がらなくても、その可能性にかける価値は十分あります。
事実、過去の釣り人達はそうやってきたし、それなりの実績も上げてきました。
釣り人が認識しているオキアミの「種類」を下にピックアップし、解説しています。種類が違うと思わない項目もあるかもしれません。だが、使い分けた結果、釣果を手にした釣り人もいるのは確かです。それを実感してください。
装餌方法の変化

同じオキアミでもハリの刺し方で沈み方やエサ盗りへの抵抗力が変わります。遠投したときハリ落ちしにくい刺し方もあります。
さまざまなバリエーションをマスターすれば応用範囲が広がり、食わせ技のスキルアップにつながるはずです。
パックとブロック

ツケエ用として販売されているパック入りのオキアミを使うか、それともマキエ用のブロックのオキアミをツケエにするか。マキエ用は身が崩れているものが混じっていてセレクトするのが面倒ですが、ツケエとマキエの完全な一致が実現できます。
カットか原形か

食いが悪いときは頭や尾を落としたり、ムキミにしたりもします。さらには頭を2、3個数珠掛けすることもあります。
赤か白か

生の状態で赤っぽいオキアミと白っぽいオキアミがあります。白い方は身がしっかりしていて、赤いタイプはそれに比べて軟らかいです。もっとも、グレがどちらを好むかはその日によって異なります。両方を準備できる場合は撒き分けて確認した方がいいかもしれません。
サイズはM、L、LL
オキアミのサイズは大雑把に分類され、販売されています。グレはMサイズ、チヌはL〜LLというのが定番で、マキエもツケエも小粒が好まれています。食い渋るグレは大きな口を開けて食べることはしないようで、オキアミは小さい方が食い込みやすいらしいです。
加工の第一歩は釣り人の工夫だった

釣りの世界ではしばしば釣り人のアイデアが先行し、メーカーがあとを追うというパターンが見られます。こういうものがあれば、今あるものはこうすればもっと釣れるのではないか。釣りの現場で釣り人が感じたものをメーカーに要求し、それに応える形で釣りは進化してきたといえるでしょう。
加工エサもその好例で、遠投したときにエサ落ちしないようにというニーズからそれは生まれたのでしょう。皆さんよくご存じのように、オキアミの体は非常にデリケートで、ビギナーはハリに刺すという行為だけで潰してしまいかねません。
そんなオキアミだけに、遠投すれば簡単にハリ落ちしてしまいます。それを防ぐため、砂糖や味の素を振りかけて身を締めるところから加工はスタートしました。
当時、ツケエ用として販売されていたのは単に選別したオキアミをパックに収めただけであり、釣具店にはまぶすための砂糖や塩を備えていました。



ますますパワーアップする加工技術
釣り人の要求はとどまるところを知りません。新しい事実が発見されてそれが一般化されると、また新たな事実を求めたがります。それが繰り返されることで進化するものなのですが、単純に砂糖や味の素を振りかけたり、アミ汁に漬け込んだりするだけでは物足りず、釣り人はさらに前進します。
今ではエサ盗りに強いハード加工を目的として、みりんに漬け込んで、さらに砂糖をまぶしたりしています。市販の加工エサにも同じ特徴のある商品はあるとはいえ、価格は400円前後はします。3、4種類も購入するとバカにならない金額になります。自作すればかなり節約できます。
加工エサの特徴

変色を抑制する
オキアミは強い直射日光を浴びると黒く変色します。度を超えると魚の食いに悪影響を与えるため、ツケエはクーラーボックスに仕舞っておいて適当量だけ取り出すというのが一般的ですが、黒変防止加工された加工エサならその心配は無用です。
ハード加工
現在、最も望まれているのがエサ盗りに強いハード加工です。皮が硬くなり、簡単にはハリ落ちしなくできています。ただ、硬すぎるためハリの抜けが悪くなっている可能性があるので、装餌する場合はハリ先を出しておきます。その方が掛かりはよいはずです。
硬くならない
冷凍エサはカチカチの状態で、マキエにもツケエにもすぐには使えません。マキエは前夜から解凍しておくのが通例であるものの、なかなかツケエまでは気が回らないことも。その点、不凍処理を施した加工エサなら冷凍庫から出してすぐでも硬くなく、すぐハリに刺せます。
マキエと色を同調
グレ用の集魚材は大半が赤い色をしています(一部、白も人気を集めているが)。ツケエも同じ赤にすると完全に同調するわけで、目立たず、グレは安心して口にします。エサ盗りからも免れやすいです。
ボイルはマダイ用という固定概念
オキアミボイルというエサはずっと以前から存在していました。しかし、生と比べると匂いが少なく、硬いという特徴は多くの釣り人にマイナス要素と受け取られ、積極的にグレ釣りのマキエに使おうとする機会はほとんどないまま現在に至っています。
これまでは使用されるとしたらエサ盗り対策としてのツケエか、またはマダイのカゴ釣り程度でした。生と比べて高額という点も嫌われている理由の一つといってもよいでしょう。
しかし、近年、匂いが少なく身が硬いという特徴を生かした釣り方が開発され、にわかに脚光を浴びてきました。
軽いという特徴をどう生かすか?

ボイルは熱処理された時点で体内の水分を奪われ、身は締まりすぎるほど締まっている。そのため、解凍したボイルをそのまま海に投入すると海面に浮かんだ状態で流れていきます。中層より下にいるグレの口に届く可能性はなく、マキエとしての効果は期待できません。
そこで、解凍したボイルは海水に浸し、十分吸わせてから撒くというのが常識とされています。
投入前に手で絞ることで水分は調整できます。固く絞ればボイルは軽くなり、浅場を流れているうちに少しずつ水を吸ってゆっくり沈んでいきます。軽く絞るとそれよりは早く沈みます。
状況に応じて使い分けるとグレの泳層をコントロールできるようになります。
エサ盗り対策としてのボイルのマキエ
ボイルは集魚材となじみが悪く、両者を混ぜても着水した時点で分離します。混ぜても効果は少なく、ベタつかないため足元に手で撒くケースが多いです。マキエヒシャクを使えば少しは飛ぶものの、原則としてボイルはせいぜい10〜20mしか飛びません。
したがって遠近分離は難しく、足元にボイルを撒いてその周囲を釣るというのが基本になります。それでも、エサ盗りに食べ尽くされることはなく、確実にグレの口に届いていると思ってよいでしょう。
今の時代、集魚材を使わないグレ釣りは考えられないかもしれません。生と違って即効性も薄いと思ってよいでしょう。だが、生+集魚材のマキエと違ってエサ盗りは少なく、待っていればグレは確実に集まってきます。そういう体験をぜひ味わっていただきたいです。
ボイルを使いこなす
穴あきシャクを利用

海水に浸してたっぷり吸わせたボイルをシャクですくうと海水も入ります。その状態で投入するとまず飛びません。もともとボイルは飛ばないものですが、せめて10〜20mでも飛ばしたいと思えば、穴のあいたシャクを利用するべきです。
ボイルを自作するには

オキアミのボイルは蒸気を噴き付けて加熱します。ただ、捕獲したばかりのオキアミに蒸気を噴き付けると体が丸くなります。その点、解凍したオキアミを自分で茹でる、または蒸すと真っすぐなボイルができ上がります。マキエにするほどの量を確保するのは難しいからツケエ限定です。
半ボイルにも注目
ボイルは硬く、エサ盗りには強いものの食い渋ったときはかじりもしない。そのデメリットをカバーするために登場したのが半ボイルです。生よりは硬く、ボイルより軟らかいという中間的な性質を持ち、同様に沈む速度も生よりは遅く、ボイルより早いです。これも自作が可能で、ボイルの半分の時間で茹でるのを止めます。