日本全国に分布し、都心の港湾から離島まで幅広く棲息しており、釣り方もエサ・ルアー問わずさまざまな方法がある。
銀色で凛々しく雄壮な姿と近場の堤防で50㎝クラスを釣り上げられる可能性の高さから魅了される釣り人も多く、堤防からのウキフカセ釣りでは一番人気と言えるだろう。
チヌのフカセ釣りにはウキ釣りの基本となる要素が詰まっている。チヌ釣りをマスターすれば、他の釣りにも応用が効くので、エサ釣り入門にもおすすめだ。
チヌの生態

チヌはほぼ一年中狙えるが、釣りやすい季節があり、時期によって狙うポイントも変わってくる。
大きく分けると、春の大型狙いと秋の数狙いだ。春は産卵のために大型が浅場に移動してくるいわゆる乗っ込みシーズン。
秋は、小〜中型が多いものの、チヌが浅場で活発に行動するため、数釣りが楽しめる。今の時期に腕を磨いて春の大型シーズンに備えるのもいいだろう。
どこで釣れる?

堤防の先端
流れている潮が堤防にぶつかるとコンクリートのケーソンに沿って流れ、先端付近で勢いを増す。このため、堤防の先端は潮通しが良い傾向にある。
また、左右どちらに流れても釣りやすいのも人気の要因だ。ただし漁船の出入り口となるため、船が通るときは気をつけること。
比較的潮通しが良い場所ではマキエの比重と打つ場所に気を使わなければならない。軽いマキエでは流れに乗って遠くまで流されるため、ポイントがはるか沖になるからだ。
想定したポイントで底まで届く比重の大きいマキエを使う。
流れに変化のある場所

堤防の曲がり角やテトラ周辺も先端と同様に潮がぶつかって変化が起こりやすい。また、溶存酸素量も豊富で多くの生物が集まる場所でもある。
底がフラットで障害物が少ない堤防や、流れがあまりない堤防では、こういった変化のあるポイントが狙い目だ。
特にテトラが入っている場所は水深が深いほど積み上げられたテトラが沖まで入っているため、より多くの魚をストックすることができる人工の漁礁といえる。
目立った変化が少ない場所では、沈み瀬や藻場などの障害物がポイントになりやすい。
海上から見ると海の色が暗くなっている場所がそれで、カケアガリも海の色で判断できることもある。
イケス周り
チヌは回遊してエサを求める傾向にあるが、養殖イケスなどがあるエサが豊富な場所ではそこに居着く個体もいる。狙える距離にイケスがあるなら鉄板ポイントになるかもしれない。
ただし仕掛けを引っ掛けないように注意すること。
タックル
ウキフカセ釣りで用意する道具は他の釣りに比べて多い。それだけ繊細な釣りでもあるのだが、最初から全て揃えるにはそれなりの予算が必要だ。
まずは必要最小限の道具を揃え、不便なく釣りができることから始めよう。
半遊動仕掛け

ウキフカセ釣り仕掛けには、ウキをヨウジなどで固定する「固定仕掛け」とウキ止めなどで遊動幅を持たせる「半遊動仕掛け」、ウキを完全にフリーにする「全遊動(全層)仕掛け」、深場を狙う「移動仕掛け」がある。
この中で堤防釣りに最適なのはタナの調整がしやすい半遊動仕掛けだ。ウキ止めの位置を動かすだけで、幅広い水深、タナに対応できる。
必要なエサ

魚を寄せるための「マキエ」と魚に食わせるための「ツケエ」が必要。どちらも釣果を左右する重要な要素なので慎重に選ぶ必要がある。
マキエはオキアミ生1角(約3㎏)に対し、集魚材2袋を混ぜ込んだものが一日(約6時間)の釣りで使う量の目安。ビギナーには余るほど多く感じるかもしれない。
しかしこの量をきっちりと釣り終えるまでに撒き切るように考えてマキエを使おう。きっと釣果にもつながってくるはずだ。
集魚材にはさまざまな効果があるが、チヌ釣りでは底に溜まるようなマキエが望ましい。通常、チヌは海底付近を遊泳しているからだ。
ツケエはオキアミ(加工・生)が標準だが、チヌは雑食性が強いため他に、練りエサ、ムシエサ、小型のカニ類、貝類、サナギ、コーンなど多くのツケエが用いられる。外せないのはオキアミ。
そしてエサ盗り対策用に練りエサがおすすめだ。
タナ取りが重要

釣り場に着いて仕掛けを組み終えたら、まずは狙うタナ(水深)を決めよう。これはウキ止めの位置を移動することで、任意のタナに設定することが可能だ。
チヌ釣りでは、海底スレスレから30㎝ほど上に設定するといいだろう。もちろん、釣れなかったり根掛かりすればウキ止めを動かして調整する。
釣り場の水深を知るには、タナ取りオモリを使用して調べる方法がおすすめだ。あまり神経質になる必要はないが、常に海底付近にタナを合わせておこう。
潮の干満で水深が変わるので、それに合わせたタナの再調整も定期的に必要となる。
狙い方

堤防で釣る場合、堤防の根元には敷石が平均して5mほど敷かれている。ここに段差ができてそれに沿って魚が移動することが多い。
このことから、まずは堤防から6〜8m沖側を狙うのがセオリーとなる。
タナ取りを済ませたら、まずはハリにエサを付けて、6mほど沖、自分の正面を目安に仕掛けを投入する。すかさずマキエヒシャクを使ってウキの周辺にマキエを3杯続けて投入する。
潮が流れていればウキは流れに乗って移動する。ウキが流れることで狙う場所が次々と変わり、広範囲を狙うことができる。これがウキフカセ釣りの利点だ。
だから流れに乗って仕掛け(ウキ)がスムーズに移動できるように、リールの道糸も同じ量だけ放出してやる必要がある。出し方は手で引き出すか、竿を少し振って出す。

もう一つ重要なのがマキエの投入位置。チヌ釣りでは海底にマキエを溜めて狙うという目的から、一定の場所を目安にマキエを撒くことが望ましい。
つまり潮の流れなどを計算してマキエを撒く位置を決定するのだ。
海中を覗くわけではないため想像でしかないが、海中で仕掛けがどのように流れているか、マキエが海底のどの辺に溜まるかなど、想像をより現実に近付けることも釣りでは大切な要素と言えるだろう。