チヌとグレはウキフカセ釣りの二大人気ターゲットであることはいうまでもない。グレの大物を釣ろうと思えば堤防では難しいが、チヌは身近な釣り場で50㎝オーバーも狙える。
ウキ釣りという同じジャンルだから両者に共通する部分もあるが、それぞれに奥が深く趣向が異なる。
釣れる時期

チヌは産卵のために堤防や磯周辺の藻場に接岸する。乗っ込みシーズンは大型の個体が釣れやすく、群れで行動するので数釣りも可能だ。
産卵後1〜2カ月もすれば体力回復のため再び活発にエサを食うようになる。夏場は甲殻類を精力的に捕食するので精悍な顔つきになり引きも強い。
秋になると徐々に水温が下がり始め冬に備えて活発にエサを追う。チヌの幼魚であるメイタがよく釣れる。
冬は小型のチヌは姿を消し低水温に適応できる大型のチヌがターゲットとなる。寒の時期の釣りは1日に一度あるかないかのアタリを辛抱強く待つ釣りとなる。
釣れる場所

湾内の潮の流れの緩やかな磯や堤防を中心に、河口から遡上して汽水域から河川の中流までと生息域は広い。
一説によるとチヌは泳ぎが苦手だと言われているが、エリアによっては激流の中でもチヌは食ってくる。
雑食性なのでエサとなるものがあれば居着いて環境に適応してしまうのだ。
チヌの食性

堤防の際に付着した貝類や磯に棲む甲殻類、イワシやシラスの幼魚なども好物でスイカやコーンも食べる。
小さな口で吸い込むグレと違う点は、チヌの口は大きくアゴも硬い。エサを口の中で咀嚼して飲み込む。このときウキにでる変化が前アタリと本アタリという訳だ。
チヌ釣りのエサはオキアミ生、加工オキアミ、練りエサ。おすすめのサイズはLサイズまたはLLサイズ。
さらにサナギやコーンはチヌの大好物でエサ盗り対策にも有効なのだ。
春先は軟らかいエサを好むのでオキアミ生が良いが、高水温期になるとエサ持ちの良いツケエが多用される。
釣り方のコツ

マキエを使うウキフカセ釣りは、マキエとツケエの同調が重要になってくる。マキエや仕掛けのコントロール性を高めることと、見切られないようにツケエのローテーションを行うことから始めよう。
エサ釣りの対象魚だと思われていたチヌだが、ルアーにも反応することが分かっている。
警戒心だけでなく好奇心も強い魚なので、ウキ釣りであっても誘いを入れてみることをおすすめする。
チヌはマキエの中心に入らず周囲から捕食していく習性があるので、マキエに差し込んでいるツケエが動けば有効なアピールとなる。
チヌフカセ釣り基本の仕掛け3種
もっともポピュラーな半遊動仕掛け

チヌは地形の変化したところに沿って遊泳する習性があるのでカケアガリはポイントになりやすい。
普段は海底近くを回遊しているので、狙うポイントが水深7mであればウキ下は7m前後と考えて良い。タナ取りゴムを使って正確な水深を計れば仕掛けが組みやすくなる。
チヌ釣りの基本は、比重の重いマキエを底に溜めてチヌを寄せ、そこにツケエを差し込んでいく。
半遊動仕掛けはタナまでダイレクトにツケエを送り込むことができるのでチヌ釣りではもっともポピュラーな仕掛けといえる。
潮の流れが速いときは海底にべったりと張り付いていることが多いチヌだが、潮が緩むと流れてくるエサに合わせて浮いてくることもあるので、その都度ウキ下の長さを調整しよう。
チヌのアタリは三段引きと呼ばれ、前アタリから本アタリまで段階を踏むことがある。棒ウキを使っているとよく分かるがトップからボディまで徐々に沈んでいく様子でアワセるタイミングを計る。
タナを決めずにツケエを送り込ませる全遊動仕掛け

半遊動仕掛けにセットしていたウキ止めとシモリ玉を外すと全遊動仕掛けになる。チヌ釣りで全遊動仕掛けを使うシーンは多い。
例えばポイントが釣座から遠いときは正確に水深を測ることは難しいし、チヌが上ずってきたら底にエサを這わせるだけでは釣れなくなる。
そんな場合はタナを決めずに表層から底までツケエを落としていくと効率は良い。
メリットとしては地形が変化したポイントを流すときや時間の経過とともに変化するタナが探れること、ウキ止めを使わないのでチヌがエサを咥えたときに抵抗感なく食わせられること。
一方、ラインを出し過ぎて根掛かりの原因となったり、ウキがツケエを引っ張ってしまいアタリが出にくくなったりするので注意が必要だ。
そうならないためには、ツケエがどの程度沈んで、どのタナを流れているかイメージする。そして張りを持たせつつラインを送り込むことだ。
スルスル仕掛けでウキごと沈める

チヌ釣り場は潮の流れのゆるやかな湾内の堤防や磯が好まれるが、潮は複雑で表層と底潮が逆方向に流れる二枚潮が発生しやすい。ウキは右に流されているのにツケエは左ということもある。
ウキや道糸は風の影響を受けやすく、潮と風が逆方向の場合は風に取られて仕掛けがタナまで入っていかない。

この状態を解決するのがスルスル仕掛けで0シブ〜000のマイナス浮力のウキを使う。
仕掛けを投入するとツケエが先行しつつウキが海中に潜っていき水の抵抗を受けてホバリング状態になる。
その間も潮を受けてツケエはマキエの煙幕と同調しながらチヌの捕食範囲に入る。
仕掛け全体が水中に入ってしまうのでアタリの目印となるものは道糸や竿の穂先だが、ある程度ラインに張りをもたせていれば、アタリの瞬間は分かる。
道糸が風に取られるとツケエはマキエとズレてしまわないようラインメンディングは欠かせない。