情報がまったくなかった、またはうっかりして聞き忘れていたため、磯でマキエを投入して初めてエサ盗りの存在に気づくことがある。
なんの準備をしてなくとも、チヌ釣りなら現地で調達できるエサを使えばなんとかなる。
しかし、チヌとは食性が異なるグレでは、ツケエで対処することはできない。また、競技会に参加すれば、使えるエサが制限される場合もある。
オキアミだけでなんとかしないといけない状況なら、どうやってエサ盗りをかわせばよいのだろうか?
オキアミだけで対処しなくてはいけない場合はマキエで回避
ツケエでエサ盗りを回避できない場合はマキエで対処するしかない。しかしアジの足は速い。マキエで足止めすることは難しい。
では、どうするか? マキエで壁を作ってしまえば、アジに対抗できないこともない。
「マキエの壁」ではない。「アジの壁」を作って空白地帯を確保し、そこにグレ用の仕掛けを入れるのだ。

上の「磯を利用する場合」という図を見ていただきたい。エサ盗り対策の一つとして、磯際を釣れば小魚がやって来る方向は半分になるというのがある。
右の図は周囲360度から小魚が襲ってくるのに対して、左の図はその半分、180度の方向からしかエサ盗りはやって来ない。だから、アジもこの方法で対処するのかというと、実は違う。
似ているところはあるのだが、根本的な考え方が違っている。
実釣に即して解説してみよう。×印がマキエの投入点で、半円を描くように継続して撒き続ける。それをずっと続けていると、この半円に沿ってアジの壁ができる。
すると、この中にアジが入ってこなくなる。アジの群れが半円を形成しなければまだマキエが足りない。さらに10〜20分と、とにかくアジの空白地帯ができるまでマキエを続ける。
その中へ静かに仕掛けを入れると、アジの被害から免れる確率が高くなるのだが、この方法は大きな問題を抱えている。マキエを大量に必要とするのだ。

もともと、エサ盗りが多い時期は、彼らを交わすためにマキエを増やさなくてはならない。水温が低くてエサ盗りが少ない時期に比べて、2倍から3倍は準備する必要がある。
ところが、このアジ空白地帯を作るためのマキエの量は、とても2倍、3倍どころではない。5倍以上、ケースによっては10倍以上必要かもしれない。
しかし、最初に、アジの存在を知らずに磯に上がってしまった場合と設定している。それだけの量のマキエを持っていってはいない。
そこで、釣り人は二者択一を迫られることになる。アジに弄ばれたままで納竿時間まで釣りをするというのが一つの選択だ。これを選ぶと釣果はほとんど期待できない。

もう一つは、1時間だけ釣りをするというものだ。なぜ1時間かというと、多分それぐらいしかマキエが続かないからだ。
空白地帯を作るためのマキエをしようとすれば、通常のマキエの量ではその程度しか続かない。
しかし、1尾、または2尾の釣果を得られる可能性がある(もちろん、ゼロということもあるが)。
マキエの量もさることながら、そのための労力も無視はできない。常にヒシャクを握って撒き続けなければならないのだ。4時間も5時間も続けられるものではない。

ここで、もう一度先程の図に戻る。左側の「磯を利用する場合」は、潮磯際から水深があり、潮が利いていることが前提となる。
ここではメインの対象魚をグレと見なしているが、チヌやイサキも同様だと考えていいだろう。
では、磯際が浅いか、深くても潮が利いていないときはどうするかというと、右側の図、つまり沖にポイントを設定するしかない。
それに伴って、マキエも労力も2倍になるのはいうまでもない。
重い仕掛けを使いアジの層を一気に突破する

オキアミでなんとかしないといけない状況のパート2として、重い仕掛けを速く沈めるという方法がある。裏ワザといってよく、1、2尾釣れれば「オンの字」という釣法である。
ツケエを速く沈めると聞くと、中級レベル以上の釣り人なら、何を今さらと思うかもしれないが、もう少し付き合ってほしい。
海面をジュウタンのように覆うエサ盗り(アジに限らない)を見ると、ビギナーなら大半の人が仕掛けを重くする。

エサ盗りは表層にいて、もっと大きい魚は中〜底層にいるから、ツケエを速く沈めればいいと考えるのだ。
ところが、速く沈むエサは海の中では非常に目立つ。マキエはみんなフワフワと沈んでいる中で、ツケエだけがスーッと落ちるのだ。注目を浴びないわけがない。
おまけに、どんなに速く沈めたところで、魚が泳ぐ速度より速くすることはできない。アッという間に追いつかれ、食べられてしまう。
で、次の段階として、釣り人はゆっくり沈めることを学習する。ツケエをマキエに紛らせるのだ。
速く沈めるよりは、この方が被害に遭う確率が低いことを知り、釣り人はステップアップするのである。
というわけで、アジを交わすために仕掛けを重くするなんていうと、鼻先で笑われかねないのだ。
ところが、他のエサ盗りはともかくとして、活性が落ちた状態のアジに対して、この方法は意外に効果がある。

魚は朝夕のまづめに活性が上がるというのは、釣りの世界では常識だが、アジも例外ではない。その活性が高いアジには通用しないものの、日中だと結構ツケエが残るものなのだ。
ただし、このやり方は、本命であるグレの活性にも影響される。アジを交わして速く沈めるためのオモリは、2B〜5Bレベルではない。最低でも1号以上、できれば2号はほしい。
そんな仕掛けを放り込むとどうなるか。
マキエを入れて魚を集めておき、そこにドッポーンと大きな水音をさせて着水させる。活性が高いアジはその音だけで集まってくるが、日中は散る場合が多い。
そして、一瞬ビックリしたあと、再び集まってくる。
このとき、アジより先にグレがツケエの元に辿り着いていないといけない。つまり、グレの活性が高いといけないというわけなのだ。
グレの活性が高くないと通用しないもう一つの裏ワザがある。

瀬戸内海で開発された「同時打ち釣法」というもので、マキエと仕掛けを同時に投入し、まったく同じ地点に着水させるというものだ。
グレの活性が非常に高く、ウキ下30〜50cmで食ってくるときに有効な釣り方で、右手に竿、左手にマキエヒシャクを握り、同時に振る。
同じ軌道で飛ばすとマキエの方が早く着水するから、仕掛けはライナー気味に、マキエはフライ気味に投げる。
マキエとツケエ(ウキではない)が同じところに落ちると、アジもグレも一瞬散るが、すぐ戻ってくる。このとき、活性が高いグレの方が早く戻るから、ツケエを食べる率が高くなる。
この釣り方で難しいのは、ツケエとマキエを同じところに同じタイミングで着水させることだ。これはかなりトレーニングする必要がある。