
ウキがスッと沈んでいくアタリは見ているだけで気分がよいものです。しかも、竿を立ててガツンとハリに掛かれば気分は最高潮。釣りの醍醐味はまさにここにあるといってよいでしょう。しかし、グレのアタリは年々不明瞭になりつつあります。アワセのタイミングを取りづらく、素バリを引くことも多いです。そこで最新のアワセ技を深堀りしてみました。
アタリとは限らない
ウキのオモリ負荷に見合ったガン玉を使っている限り、ウキが沈むのはすべて魚が食ったせいではありません。原因はいろいろあります。波、根掛かり、藻掛かり、潜り潮、スレアタリ(魚の体が道糸やハリスに触れて出るアタリ)などがそれで、残存浮力を極力減らそうとしている傾向が強い現在、ウキは非常に沈みやすい状態にあります。
一方、グレのアタリが明確に出る機会はますます少なくなっています。そのため、アタリなのか、それとも他の理由によるものなのかが判別しづらいです。

特に、波による変化は短時間でしかなく、アタリではないと断定するのが難しいです。したがって、波で沈むたびに、アタリと同様の態勢を取る必要があるでしょう。もっとも、波のタイミングを見ていれば、ウキが沈んだのは魚のせいか波のせいなのかは徐々に判断できるようになります。
とはいえ、波による動きの中で異常があれば、それが小さくてもアタリである可能性があります。エサ盗りかもしれませんが、アタリはすべてグレと見なして対処するのがグレ釣りの原則といえます。
アワセのタイミングは人それぞれ
グレが上下運動でエサを食べていた時代、ウキ下とタナが合えばウキは斜め下に沈んでいました。沈み方はさまざまで、最初はゆっくり、そして徐々にスピードアップすることもあります。
それなりの速度でいきなり沈んでいくこともあります。グレの活性に関連するため均一というわけにいかないのは仕方がありません。
そのようなアタリは現在でも目にする機会は多く、的確に対応する必要があるのはいうまでもありません。数少ないチャンスはしっかりモノにしておくべきでしょう。

ところが、グレのアワセのタイミングは、現在に至るも確立されていません。それは取りも直さず、グレの就餌行動にさまざまなパターンがあることを証明しています。同じようなウキの沈み方を見せても、あるときは早アワセで掛かっても、他の機会では遅アワセでないと掛からないこともあります。そのため、ハリ掛かりしなかった場合はそれよりも遅く、または早くして、その場・その時に適したタイミングをつかまなくてはなりません。
ベテランはそのことを熟知しているから自分なりのタイミングを基本として、それから修正していきます。その基本は大きく分けて三通りあります。早アワセ、遅アワセ、そして、スピードが乗ったときというものです。順に説明してみましょう。
まずは早アワセ。これは、文字通りウキが動けばすぐにアワせます。沈んでも浮いても横に動いても即アワセします。ウキが動くのは魚が引っ張っているからで、手のない魚が引っ張ろうとすれば口を使うしかありません。エサをくわえているか、または口の中にエサを入れています。
それでは掛からないだろう……遅アワセ派はそう思うかもしれません。しかし、早アワセ派はそれなりの実績を着実に上げています。しかも、遅アワセに比べて勝るところがあります。アワセの回数が圧倒的に多いことです。

ウキが沈んで完全に見えなくなるのを待っていたら、1日に数回しかアワセを入れられなかったというケースが厳寒期にはよくあります。そのため、グレのアタリをみすみす見逃している可能性は高いです。
ここでは典型的なアタリに対するアワセをテーマに進めているのですが、早アワセだとそんな前提はまったく意味がありません。
とにかく、アワせてアワせてアワせまくります。
古くから普及している遅アワセ
アタリが出たらウキが見えなくなるまで待って、それからアワせる……かつてはそれがグレ釣りの原則でした。磯釣りを始めたばかりのビギナーは往々にして早アワセの傾向が強く、最初は先輩から徹底してシゴかれたものです。
ハリに掛かる確率は非常に高く、食い渋ったときでも竿に乗るまで待てば100%近い高確率で掛けることができます。
アワセが遅いとハリを飲み込まれるか、またはジゴクともカンヌキとも呼ばれる口の脇に掛かるため、やり取りの途中でハリが外れることはめったにありません。早アワセでは皮一枚に掛かるケースも多く、ハリ外れでバラすことが少なくありません。

そういうメリットから現在でもこのタイミングは根強く残っており、早アワセに対して強く反発する釣り人は少なくありません。
しかし、このアワせ方は弱点も多いです。釣り上げたグレの大半はハリを飲み込んでおり、ハリ外しを使うにしろハリスを切って結び直すにしろ、処理に手間が掛かります。近年の傾向として時合が短くなっており、その短い時間でより多くのグレを釣ろうとしたとき、処理に手間が掛かるのは大きなマイナス要因になります。
また、早アワセの項で説明したように、食い渋る時期はウキが見えなくなるのを待っていては、一度もアワせることなく納竿する可能性が高いです。

さらに、ハリを飲み込まれたくない魚がいます。そう、尾長です。歯が鋭い尾長に飲み込まれるとハリスを切られる確率が高く、口太は確実に取り込むため飲み込ませることが許せても、尾長でそれをやるとバラす可能性が高くなります。
チモトを補強する方法は各種あるものの、飲み込ませなければ取り込みやすくなるのは間違いありません。
沈む速度が上がったときにアワせる

早アワセ、遅アワセともにある程度パターン化させて、それでハリに掛からなければタイミングを修正していくという方法をとります。ですが、この方法はウキの動きを見て魚の動きを推測し、それに応じてアワセのタイミングを図るというもので、ウキが見える範囲という前提が欠かせません。その代わり、ジゴクに掛かる機会が増え、飲み込まれることもハリ外れも少なくなります。もちろん、素バリを引く確率も低いです。なぜか?
活性の高いグレが本流でエサを食べるときは問題ありません。一気に食い込むことが予想されるからです。しかし、そうではないケースでは、①グレがエサを見て、②口先でつついて異常がないことを確認し、③口の中に入れて、④次のエサを食べようとする。異常を確認するときは口の中に入れたり出したりを繰り返す場合もあります。
①〜③のステップではウキがモゾモゾするだけでアタリを判別しづらく、アワセのタイミングも取れません。④の次のエサを食べようとしたとき、またはエサをくわえて他の魚に盗られないように移動したとき、ウキは速度を上げて沈みます。このときアワせればジゴクに掛かりやすいのは納得できるでしょう。
アワセの方向が掛かりを左右する

早アワセの説明の中で触れなかった内容があります。素バリが多いということです。それも無理のない話で、釣り人もそれを納得したうえで早アワセをしています。
素バリが多い理由は二つあります。一つは、ハリが完全に口の中に入っていない可能性があることです。グレはオキアミを食べているのであって、ハリではありません。グレにしてみればハリはゴミのような存在で、わざわざ口の中に入れようとはしません。
もう一つの理由はグレの向きにあります。口がこちらを向いているのにアワセを入れれば、ハリが口の中に入っていたとしてもスッポ抜けるのは当然です。近年、グレ釣りに用いるハリはますます小型化の傾向を辿っています。
たまたまグレが反対を向いていればハリに掛かるでしょうが、早アワセではそれを確認する時間的な余裕はありません。素バリを引くのは仕方がないことは理解できるでしょう。
このように、魚の向き=アワせる方向はハリ掛かりに大きく影響します。別の言い方をするなら、ウキが沈む方向とは反対にアワせれば確実に掛かることになります。つまり、魚が走っているのとは反対方向です。
ウキが沈めば、なにも考えずに竿を立てていないでしょうか。ある程度の距離があればその必要はありませんが、足元近くで食わせた場合はそれだけでハリに掛かる率はアップします。
早いアワセは強いアワセではない
早アワセには早アワセのメリットがあり、それなりに実績を上げています。しかし、ここで注意しなければいけないのが、早い=強いではないということです。

グレ釣りに強いアワセは禁物だとは昔からいわれていました。理由は次の三つです。
- 強くアワせてハリに掛かったとき、魚が大きいとそのショックに耐えきれずハリスが切れます。それがアワセ切れというもので、イシダイ釣りで根掛かりしたとき、ワイヤハリス、または道糸20号を切るために「ショック切り」という方法を用います。それがアワセ切れと同じで瞬間的に強い力を掛けます。ゆっくり力を掛ければナイロンもフロロカーボンも伸びるから、実際以上の強度を発揮するためなかなか切れません。
- 例え切れなかったとしてもそのショックは魚に伝わり、魚は強く反発して激しく抵抗します。「魚が怒る」という現象で、必要以上に暴れるため取り込みに苦労します。ソフトにアワせると魚の抵抗は弱く、楽々取り込むことができます。グレ釣りにチヌ竿を用いる釣り人がいるのもその理由によります。
- 強くアワせると水面を漂っていた道糸が水を切ります。道糸がフケていればその度合いは激しく、太陽光を反射して「白い光」が水面で大きく早く動きます。これは魚にとって非常な脅威で、マキエに集まっていたグレは一斉に散ってしまいます。
では、どんなアワせ方をすればよいのでしょうか? 可能ならば道糸をビンビンに張っておき、手首を返してアワせる。こうすれば素早く、だが強くはないアワセができます。現在市販されているハリは概ね先端が鋭く、軽いアワセでグレの口に突き刺さります。周囲の魚が驚いて逃げ出すこともありません。
ただし、「可能ならば」という注釈を加えたように、道糸を張れない状況があります。道糸を張ればマキエと同調できないというのがその代表的なケースで、はるか遠くまで流した場合もそれに含まれます。手首を返すだけではアワせるという行為はハリ先まで伝わりません。こういうときは大アワセせざるを得ません。
エサが変わればアワセも変わる

アワセのタイミングを左右する要素としては、ツケエの種類も忘れてはならないでしょう。エサが大きければ食べるのに時間がかかるのは当然といえます。夏の一時期、エリアによってはムシ類やフナムシを使うところもあります。高水温期はエサ盗りも多いから、ある程度かじられる予定でツケエは大きく装餌します。
予定通りエサ盗りがかじって、グレのタナに届いたとき小さくなっていれば問題はありません。ですが、たまたま大きいままでグレのタナに沈むと、それを口に入れるのに時間がかかります。早アワセではまずハリ掛かりしません。
エサ盗りがあまり好まないオキアミのボイル、小アジ対策として使われる海産のエビも簡単に口に入れることはできません。アオサもまたしかり。
逆に、生のオキアミをムキミにした場合など小さくて軟らかいエサは食い込みが良く、早アワセでも掛かりやすいです。
食い渋ってアワセのタイミングを取れない

多くの釣り人が悩んでいるテーマに移りましょう。ウキがモゾモゾするばかりでそれ以上の動きがなく、アワセのタイミングを取れないケースです。待っていればやがて動きは止まり、仕掛けを巻き取るとツケエは残っていない。半分だけかじられていることもあります。
エサ盗りのアタリだと見なすと悩まなくてもよいのですが、いろいろ工夫して食わせたらグレだったということが何例もあります。すべてエサ盗りで済ませるのはあまりにももったいない話です。アタリはすべてグレと思うことから解決策の探求はスタートします。それがグレ釣りの原則です。
では、ウキがモゾモゾとしている間、グレはどのような動きをしているのでしょうか? グレは水平運動をしながら就餌しており、その動きも小さいです。自分のすみかの近くで食った場合は居食いしていることも考えられます。ただ、わずかでも食欲がある以上、どこかに打開策はあります。そう思うことから始めましょう。
アタリと思ったらハリスを張る

どうしても明確な動きがウキに現れないときの常道は、ハリスを張ることに尽きます。これには二つの意味があります。一つは、グレの動きをウキに明確に伝えるためです。張れば張るほど小さい動きが分かりやすくなります。
といって、張り過ぎてグレがエサを離せば逆効果です。ゆっくりと優しく張る作業が欠かせません。
しかし、風が強いとこの作業が難しくなります。じわっと張ろうとしたところで風が吹くと穂先が1mも2mも煽られます。その動きがツケエに伝わるとほぼグレはエサを離してしまいます。つまり、風が強いときはこの方法は使えません。このことは覚えておきましょう。

ハリスを張るもう一つの目的は、完全に張れてしまうとグレがエサを吐き出せないことにあります。吐き出そうとするとハリ先が掛かってしまうのです。掛かる場所は特定できないし、刺さる深さもわずかであるため、それだけでグレを釣り上げることはできないから、仮にグレがハリ掛かりしたとしたら二度アワセが必要になります。
それはともかく、ハリスを張った次の段階に進めましょう。軽いテンションを掛けられると、グレは往々にしてなおも食い込もうとします。エサが逃げようとすると、魚はそれを防ぐため強くくわえるものです。チヌやイシダイ、青物は特にその傾向が強く、エサをくわえたときは送ってテンションを緩めるよりも、逆に張ってテンションをかけた方が確実に食い込むことが多いです。

グレにもその傾向があり、穂先を軽く曲げた状態で待っていれば、たとえ食い渋る時期でも確実に食い込む可能性が高いです。ただし、待っていれば必ず食い込んでくるとはかぎりません。なおもじっとしていることもあれば、途中で離す場合ももちろんあります。テンションをどれだけかけるかという大きな問題があり、穂先の硬さと相まってこれはいまだ解明できていません。
ウキの重さが食い込みを促す

食い込んだときにテンションをかけると食いが良くなるというのは、実はずっと以前から釣り人の間で知られてはいました。それはウキの使い方という面でした。
感度のいいウキと、感度を犠牲にしてでも使いやすさを優先したウキを比べてみましょう。例として小型棒ウキと通常の円錐ウキを取り上げてみます。
小型棒ウキは感度を最優先したもので、軽い・小さい・見やすいことを前提として開発されています。したがって、魚の小さな動きにも敏感に反応し、それを釣り人に伝えてくれます。食い込んだときの抵抗は非常に小さく、魚はほとんど違和感を覚えません。
そのため、エサをくわえたらその場を移動して、他の魚に奪われないところでゆっくりと食べます。ウキが沈んだ時点ではまだくわえているだけで、ハリは口の中に入っていないことが多いです。その結果、素バリを引いてしまいます。

対して、円錐ウキというのは、小型棒ウキに比べて大きくて重たく、抵抗も大きいです。魚が食い込んだとき間違いなく違和感があります。だからエサを離す……と考えるのは早計で、実際は食い込みが良くなるケースが多いです。
理由はエサが逃げようとすれば、魚がなおも食い込もうとするからです。つまり、テンションを掛けたのと同じ状況が生まれます。
逃げるエサを追い掛けるという習性は、グレが浮いたときにも見られます。近年はめったに遭遇しませんが、活性が高くグレの数が多いときは水面近くまで湧くことがあります。そんなとき、ウキ下を極端に浅くしてもハリに掛けるのは難しいです。活性が非常に高いのだから簡単に釣れるだろうと思いきや、これがなかなか難しい。エサを盗られるだけで素バリを引いてばかりいることもあります。
このとき、群れの中を通るように仕掛けを引いてくれば、グレはエサを追いかけて食べようとします。ためらうことなく本流の中でエサを食べるように食い込んできます。逃げるエサを追いかけるのは本能なのでしょう。
バーチカル釣法でのアタリとアワセ

ここまで、アタリの判断はウキを中心に進めてきました。では、ウキに頼らずにアタリを判断する釣り方ではどうなるのでしょう。沈め釣りや全遊動を代表とするバーチカル釣法の場合です。
沈め釣りでは、ある程度以上沈めるとウキは見えなくなります。その状態でアタリを判断しなくてはならないケースはいくらでもあります。
バーチカル釣法の大きなメリットは、タナを探ると同時に食い込んだときの抵抗が非常に小さいという点にあります。そのため食い込みが非常によく、ほとんど向こうアワセでハリ掛かりします。道糸や竿先に反応が出たときはすでにハリを飲み込んでいることが多く、アワセにはまず悩みません。だから食い渋ったときはこの釣法が強みを発揮するといわれています。
しかし、住処から出てこないグレの鼻先にツケエを送り届けたり、エサをくわえたままじっとしているグレにそれ以上食い込ませたりするのは、はっきりいって苦手としています。そもそも微細なアタリが取れず、仕掛けを上げてみたらツケエがなくなっているのを見てようやく、エサ盗り、またはグレがかじっていたことを知ります。
バーチカル釣法とはそういうものであると知っておかなくてはなりません。
ベイルを起こしてアワせる

ベイルを起こしていると、瞬間的にフリーで道糸を送ることができるほか、さまざまなメリットがあります。同時にデメリットもあります。
以下、オープンベイルの功罪を羅列してみましょう。
- ある程度の速度で仕掛けが流れているとき、ブレーキを掛けながら道糸を送るのにオープンベイルは都合が良い。ただ、リールの足が長いとスプールを押さえる指が届かない場合がある。
- ハリ掛かり直後に猛烈なスピードで走る魚は、オープンベイルの方が即座に対応できる。ベイルを倒していると、いきなり突っ込まれたとき竿先を持ち込まれ、対応する暇がなくハリスを切られる。
- ベイルを倒していると、道糸の位置によってはアワせた瞬間にベイルが戻ることがある。
- 油断しているとアワせるときにスプールを押さえるのを忘れることがある。また、魚のパワーが強いと指を弾かれる場合もある。
- リールのストッパーをオフにしていると、魚が走ったときハンドルがいきなり逆転する。スビードが早いと指を骨折しかねない。
往々にしてオープンベイルのメリットはベイルを倒していた場合のデメリットになるし、その逆もあります。

次に、アワセを入れるときの動作を見てみましょう。仕掛けを張り、ツケエを先行させるためには竿先を下げて極力風の影響を減らします。ウキが沈み始めたらアワセの準備のため、さらに竿先を下げます。
早アワセにしろ遅アワセにしろ、竿をソフトに立てた時点で魚の大きさを推理します。オープンベイルの場合、ここでベイルを倒すか、それともフリーで道糸を出すかを判断します。
ベイルを倒した状態でアワせたときは、やはりここでどうするか判断します。口太ならレバーブレーキで対応できるから、ストッパーをオフにするかどうかを決めます。ドラグで対応するならなにもする必要はありません。
このように、いずれの方法であったとしても、魚が大きければ釣り人が自分で判断してリールを操作しなければなりません。そして実際に試し、どの操作ならスムーズにやれるかを選択します。めったに遭遇しない大物だけに、慣れないうちはどうしても慌ててしまいますが、パターンを決めてしまえば慣れるのは早いでしょう。