人間にも食事の好みがあるように、魚にも好みはある。ツケエで一番ポピュラーといえばオキアミだが、だからといってオキアミ一択というわけではない。
好みも地域性や季節によって変わることもある。チヌの気持ちになり、一番食べてくれそうなツケエを選ぶことが大切である。
チヌの食性

雑食性で有名なチヌは、海に棲む生物はもちろん、人間が食するもので釣ることもできる。
好奇心が強いだけではなく、食欲も旺盛。ただし、季節によって好むエサがあり、冬期から乗っ込み時期の春先は軟らかいエサを好み、夏から秋の水温が高い時期は硬いエサを好んでいるようだ。
とはいえ、どんなエサを使っても釣れるというわけではない。地域性はもちろん、その日の状況によって一番釣れるエサが変わってくる。
大切なのは、釣り場の環境に合わせたツケエを使用することだ。特に活きエサを使用する場合は、その釣り場に棲息しているものを使用した方が効果的である。
一般的に使用するツケエ
オキアミ

海釣りにおいて最もポピュラーなツケエがオキアミだ。プランクトンの一種で「ナンキョクオキアミ」が標準和名。冷凍保存ができるためほとんどの釣具店で取り扱っており、入手しやすく、ツケエとして使いやすい。
サシアミ

オキアミよりも小さく、日本近海で獲れる「三陸アミ」が主流。身が軟らかいため、太いチヌバリに付ける場合は房掛けにすることが多い。春の軟らかいエサを好む時期や、冬期の食い渋る時期に効果的。
シャコ(ボケ)

食用のシャコと違い小型のもの。通常は生きた状態でハリに刺して使う。オキアミよりも殻が硬くエサ盗りが多いシーズンによく使われるが、イカダのチヌ釣りや投げ釣りに使うことも多い。
カニ・貝類


落とし込みやイカダ釣りで使用されるケースが多く、小磯や堤防の際での採取も可能だが、釣具店でも販売されている。カニは殺さないようにハリに刺して使用し、貝類は殻付きのまま使うのが基本。
ムシエサ


ゴカイ、アオイソメ、ホンムシが主流で地方により呼び名が様々。主に投げ釣りで使われ、古くから釣りに使われてきたエサ。日本産が減少しており、近年では輸入が主流になっている。
練りエサ

人工のエサだが、チヌ釣りでは定番のツケエ。海中で溶けるので、練りエサ自体にも集魚効果があり、また、エサ盗りの多い時期でもエサ持ちが良く、特に夏場に活躍する。
エサ盗りが多い時期に活用するツケエ
サナギ

絹糸の原材料として有名なカイコのサナギだが、釣りエサとしても古くから使われており、養殖魚のエサにも使われている。チヌ用の集魚剤に多く含まれており、強い匂いでチヌを寄せる。
ムギ


主にマキエに混ぜて使われる。ツケエに使用する場合は押しムギを水やオキアミの汁でふやかし、ハリに3〜4粒刺して使う。釣り上げたチヌの胃の中を見ると、ムギで一杯になっていることが多い。
パン粉


グレ用のエサとして使われる事が多いが、チヌ用に使うときは練ってネバリを持たせて使用する。これに集魚剤を混ぜたり、オキアミを一緒に擦り潰したりして使うとさらに効果的。
コーン

食用の缶詰が一般的だが、釣り専用に発売されているものもある。エサ盗りが辺り一面に拡がる夏場に活躍するが、小粒なのと色のアピール度が高いので食い込みが良い。3〜4粒ハリに刺して使う。
スイカ


夏の風物詩として、北陸や関東の一部で使われている。大型が食ってくる事が多く、水深が浅い地磯などで釣る。マキエもスイカを撒き、海面を漂うスイカにチヌが群がることもある。
海藻類

チヌ釣りではあまり使われないが、春から初夏にかけてや、冬期に釣ったチヌの腹にアオノリがびっしり詰まっていることも多い。ハリに付ける場合は、縫い刺しにしてハリから外れないようにする。
フナムシ

広く分布しており、釣り場のどこにでも棲息している。姿形から敬遠されがちだが、魚も食い馴れているのか、バツグンの食いの良さがあり、良型が釣れる確率も高い。
カメノテ


磯に棲息しており、その名の通り亀の手に似ている。茹でて食べると食味がよく釣りに行くと必ず持って帰る人もいるくらいだ。殻が硬いので、剥いてやるとハリに付けやすい。
フジツボ

殻は付けたままか大きなものは殻を割ってハリに刺す。特に磯での釣果が良く、マキエにも混ぜて使うとさらに効果がアップする。イシダイ釣りでもマキエとして使われる事が多い。
ウニ


釣りエサ用として売られている「ガンガゼ」を使うことが多く、底物釣りの定番エサで釣具店で売られている。殻を割って卵巣を付けるか、小さなものはトゲを全て切り落としそのまま使う。
ミニ貝柱

ミニ貝柱(ベビーホタテ)を使用する。ものによっては、解凍すると軟らかいものもあるので、自宅で確認して釣り場に持って行くようにする。付け方は縫い刺しが外れにくく、エサ盗りが多い時は数個付ける。
小魚

冷凍のキビナゴが手に入りやすい。
チヌはルアーで釣れるほどフィッシュイーターでもある。小イワシの群れを追い食いするシーンも見られるほどだ。ちなみに日本記録のチヌもイワシで釣り上げられている。